ジャッカルの日
『ジャッカルの日』フレデリック・フォーサイス(角川文庫)

暗号名ジャッカル‐ブロンド、長身、ひきしまった体躯のイギリス人。プロの暗殺屋であること以外、本名も年齢も不明。警戒網を破りパリへ……標的はドゴール。計画実行日“ジャッカルの日”は刻々と迫る!(本書あらすじより)

角川文庫ミステリチャレンジ第四弾はフォーサイスです。冒険小説の代表傑作です。
ド・ゴール暗殺はいかにして計画され、失敗したのか?をリアルに描ききった作品。暗殺者とそれを阻止する刑事の戦いという王道的なストーリー、しっかりとした構成と読み応えにより、名作としての貫禄は十分でしょう。

とにかく暗殺計画が実に細かく念入りで、これマジで行けそうだなと思わせるところがすごいのです。さすがに同時代の人間ではないので事実とまでは思えませんが(当時小説や映画で本当にあったことだと思った人も多かったらしいですね)、読んでいる間の“殺れそう”感が真に迫っています。フランス政府側の最強っぷりのせいで暗殺者の最強っぷりがさらに際立ちます。
で、こいつ防ぐの絶対無理だろと思っていると第二部からルベル警視が登場します。彼は命ぜられて否応なくジャッカル探しを担当するのですが、この人がまたすげぇ優秀で、暗殺阻止のため着々と捜査を進めていきます。見た目は冴えないのにね(っていう設定ベタだけど良いよね)。作者は細かな伏線を置き完璧な計画と完璧な捜査を見事に組み合わせていきます。

最初に作者が述べているように、ジャッカルは当然ド・ゴール暗殺に失敗します。ジャッカルが結局失敗した理由を、ジャッカルの(しょうもない)ミスのせいにしなかったところが偉いですね。暗殺者が各所でミスってりゃ物語を進める上でこんなに楽な話はないんですよ。そうではなく、ジャッカルは徹頭徹尾プロ、その隙間をいかに警視がかいくぐっていくかをしっかり描いているところが良いんです。
どちらもプロフェッショナルだから、ジャッカルを応援すべきか、それとも警視を応援すべきか難しいんですよねぇ。常に冷静な若い暗殺者と、冴えないけど優秀な中年警視。どちらが悪役とかそういうのはなく、いわばダブル主人公でどちらも応援したくなります。作者さんこりゃずるい。

というわけで傑作なんですが、個人的には「暗殺はなぜ失敗したか?」を主眼に押し出したのはちょーっといただけないかなと思いました。そのせいでラストの緊張感が、それはそれは高まるんですけど、やや見通せてしまうというか、どうせこうなるんでしょ、という風にも思えちゃうのです。
作者は一種の史実として書きたかったようなので、最初から結末が明かされた、ある種倒叙ミステリのようなスタンスになるのは仕方ないんですけどね。ド・ゴールの死後直後に、実は昔こんなことがあったのです、という態で発表しているわけだし。でも今なら、ラストにド・ゴールが死ぬのか死なないのか、歴史通りなのかそうじゃないのか、を思わせぶりに書いた作品の方が楽しめると思います。
……というワガママでした。いずれにせよ、冒険小説として素晴らしい作品であるのは間違いないですが。倒叙っぽいところが、本格読みとかにもアピール出来るんじゃないでしょうか。

書 名:ジャッカルの日(1971)
著 者:フレデリック・フォーサイス
出版社:角川書店
    角川文庫 赤537-1
出版年:1979.06.10 初版
    1989.07.30 21版

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/998-b6ec9ff7