笑う警官
『笑う警官』マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー(角川文庫)

ストックホルムの街はずれの荷役場に市内循環バスが突っ込んだ――運転手以下、乗客の死体を満載して。軽機関銃乱射による大量殺人! 殺人課主任マルティン・ベックは現場に急行した。死体の中には部下が一人含まれているとの報も。血の海の中には、はたして拳銃を手に絶命している気鋭の若手刑事の顔があった。犠牲者はすべて偶然そのバスに乗り合わせた者ばかり。狂人の犯行説が圧倒的ななかで、死んだ刑事の生前の行動を洗うぺっくの前に意外な事実が浮かびあがってくる。(本書あらすじより)

角川文庫ミステリチャレンジ第三弾、MWA賞受賞の超有名作です。たしか非英語圏のミステリでの唯一の受賞作だったような。英米でも人気を博したシリーズの代表作ですね。ちなみに自分が読んだのは高見浩氏による旧訳で、英語からの翻訳ですが、新刊で入手できる新訳版はスウェーデン語からの翻訳です。
路線バスでの大量射殺事件という発端こそ派手なのですが、中身は地味で堅実で真っ当な警察小説。しかし事件発生から犯人逮捕に至るまでの着々とした道のりの計算深さはお手本中のお手本で一切隙がありません。これは傑作です。

乗客について調べていくところから、乗客の一人で殺されたステンストルム刑事は何をしていたのか?へ行き着き、そこから捜査員全員の能力を全てカバーしながら真相へと一歩一歩進んで行きます。同僚の知らなかった、刑事のプライベートが次第に浮かび上がってくる様はもはや芸術です。
といった謎解きや伏線回収が上手く、さらに警察小説としてストックホルムの警察の捜査がこれでもかと丹念に描かれています。登場人物全員が無駄なくしっかり機能しているんですよね。無駄口を叩く人、記憶力のよい人、地方から応援に来た人、と各自が自分の得意に応じて勝手にそれぞれ捜査を進めていくのがだんだんと上手く噛み合っていく感じが何とも言えません。さらにこの無駄なく機能して“いなかった”部分で真相とオチを付けるやり方もまた収まりがよくて良いですね。

ストックホルムの街や人の様子が物語の背景として描かれていて、これがまた面白いです。都会のストックホルムの警察官と田舎から応援で来た警察官の共同捜査でストックホルムの街を描き出していくのが上手いですよねぇ。基本的に淡々とした筆致にもあっていて、読み進めやすくはまりやすい小説だと思います。

あまりに隙がなく、完璧な作品。そのせいで飛びぬけた面白さがあるようなものでは個人的にはないんですが、それでもこれは読んで面白かったと断言できます。一作読めばシリーズ全てを読みたくなるほど読者を引き込むんだから大したもんですよね。堪能しました。名作名作言われるだけはある一品です。

書 名:笑う警官(1968)
著 者:マイ・シューヴァル、ペール・ヴァールー
出版社:角川書店
    角川文庫 シ-3-4
出版年:1972.07.20 初版
    1993.03.20 31版

評価★★★★★
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