寂しすぎるレディ
『寂しすぎるレディ』ドミニック・ルーレ(ハヤカワ・ミステリ)

“さびしすぎるヤングレディ32歳、退屈をまぎらすためにやさしくてさびしすぎるヤングマンを求む” レアとはこんな文面の広告を通して知りあった。初めて彼女に会ったとき、売れない作曲家アントワーヌは驚いた。グリーンの瞳に似合うグリーンの服、ひく手あまたという感じのこんな美しい人が、どうして交際欄なんかに広告を……? 二人は急速に親しくなり、やがて愛しあうようになった。しかし、レアが明るい顔を見せることはめったになかった。何か秘密ありげなのだが、アントワーヌがわけを尋ねてもただ泣くばかりだった。それがある日、リリに会って欲しいと言い出した。リリとは、以前からレアが一緒に暮らしていると言っていた3歳になる女の子だが、なぜかアントワーヌには会わせようとはしなかったのだ。(本書あらすじより)

本当はあらすじもっと続くんですけど、これ以上書くとネタバレというか、とにかく書きすぎのような気がするので、ここらへんで止めます。
さて、角川ミステリチャレンジの息抜きにフランスミステリです。フランス推理小説大賞受賞作の中では今でも結構名前を聞くタイトルですね。聞くってほんの一部の界隈でですけど。
主人公の男と怪しい女が出会ってサスペンスに発展するというフランスミステリ的お約束展開に加え、仏ミス的どんでん返しが大したことない(予想通り過ぎる)ことを考えると、一見しょぼそうな話なんです。実際あらすじだけ言っちゃえば本当に大したことないんですが、案外とこの作品は良作です。重苦しくない、一種叙情的な雰囲気が実に魅力的。

うーん、何て言うんでしょうねぇ、通り一遍のサスペンスとはどこか違うんですよ。じんわりと暖かく、上品さを感じます。ジプシーに惹かれるレアの心の中の切ない孤独感や、レアのことを想うアントワーヌの不安感、さらには後半から登場する少女リリの心情や小悪党の描写などいずれも丁寧で、感情移入しやすいものとなっています。どことなくセンチメンタルなのかな。

レアの企みや犯罪の動きもベタなんですが、変に嫌な展開に持って行ったりしないところにも好感が持てますし、何よりラストを悲しくも美しいものにした作者はなかなかいいセンスをしているんじゃないでしょうか。地味だけど、そしてほんと大したことはない作品なんですが、なかなか良いものでした。他の作品が訳されなかったことが残念です。

書 名:寂しすぎるレディ(1979)
著 者:ドミニック・ルーレ
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ 1406
出版年:1983.01.15 1刷

評価★★★★☆
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