引き攣る肉
『引き攣る肉』ルース・レンデル(角川文庫)

ヴィクターには或る恐怖症があった。14年の刑期を終えて出所した今、彼はその恐怖の因となる’もの’をいずれ目にすることを予測していた。彼のもう一つの関心は、フリートウッドという元刑事のことだった。ヴィクターは女を襲って追われる途中、フリートウッドを銃で撃ち、逮捕されたのだ。彼は半身不随となったが、クレアという恋人と幸福に暮しているという。不思議な運命の糸に操られたかのように、ヴィクターは彼らと出会った。クレアを含む3人の間に生じた、奇妙で危険な関係、それがやがて恐るべき破局を生むことになるのだが……。CWA賞受賞の傑作。(本書あらすじより)

さて、1月は「角川文庫ミステリチャレンジ」を決行しました(もう終わったけど)。普段は早川創元漬けなので、たまには他の文庫も読もうぜという企画ですね。各文庫の代表的な作家と作品を読んでいこうという非常に贅沢な企画。何しろ読む本読む本傑作ですからね、なんと楽しいチャレンジなんでしょう。ちなみに2月は新潮文庫、2月は文春文庫を予定しています。
というわけで、まずは角川文庫です。ルース・レンデル、トニー・ケンリック、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー、フレデリック・フォーサイス、トレヴェニアン、リチャード・ニーリィという豪華な面子で実行。なんと全員初読み作家ですよ(どんだけ角川文庫に縁がないんだ)。どの作品の感想がアップされるのかお楽しみに……といって基本的に代表作なんですけどね。

さて、というわけでルース・レンデルです。まぁたぶん代表作は『ロウフィールド館の惨劇』でしょうけど、『引き攣る肉』を積んでいたのでこっちに(ゴールド・ダガー賞とってるし)。
サスペンスというか普通小説というか、微妙なライン上の作品です。出所した元強姦魔にして殺人未遂犯、ヴィクターの破滅を描く物語。終盤までほとんど動きはなく地味なお話なのですが、心理描写が読ませるので案外面白いです。ただ、やや長くてちょっと中盤がだれたかな。

全編通してほとんどヴィクター目線なのですが、この男が中盤以降明らかに狂い始めていて、描写が全く客観的ではなくなるんですよね。ここから来る不安感が作品全体の雰囲気を支配していて、サスペンス的な高まりを与えてじっくりと読ませます。読者は破滅に向かうヴィクターをただ眺めるしかない、というわけ。この視点がなかなか食わせ物。つまり、ヴィクターが昔撃った元刑事であるフリートウッドの目線をレンデルはほとんど入れないのですが、この点が非常に秀逸です。読者は、何が正しくて何が正しくないのか、判断し難いことになります。
ヴィクターとフリートウッドの対立をどう落とすのかなと思って読んでいたら、なかなかヴィクターの壊れ方が予想以上で、ちょっとずらされた印象。そのせいか消化不良な感じがあるのですが、いやぁこういうのもオツなものです。レンデルさんうまいですねー。

ただ、ヴィクターの内面を延々と読まされるのは面白いんですが、途中ちっと飽きたのも確か。フリートウッドとの関係が出来たあとしばらくが、単調というか繰り返しっぽいんですよね。終盤の急展開に向けてもう少し階段を作ってくれても良かったんじゃないかなと思います。

というわけで角川文庫ミステリチャレンジ第一弾無事終了、初レンデルでした。いやーやっぱりこの作家さん、嫌な話を書きますね……。今度はウェクスフォード警部物かな。

書 名:引き攣る肉(1986)
著 者:ルース・レンデル
出版社:角川書店
    角川文庫 赤541-14
出版年:1988.04.10 初版

評価★★★☆☆
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