不吉な休暇
『不吉な休暇』ジェニファー・ロウ(ミステリ・ボックス)

「今年も全員やって来るんだろうな」ジェレミーがうなるように言った。「テンダー一家の勢揃いか……ぼくも年だね、ケイト、もうつき合いきれないって感じだよ」……オーストラリア、シドニー近郊の山里。一人住いのアリス伯母さんのリンゴ園の収穫時期、毎年集まってくる親類縁者の中に今年は不協和音が目だつ。何かよくないことが起こりそうな予感がする。(本書あらすじより)

……あいかわらずミステリ・ボックスのあらすじは使えないなぁ。
アガサ・クリスティらしさとクリスチアナ・ブランドらしさに満ちた本格ミステリ。ねちねちと家族関係を描きしっかり伏線を拾いきっちり謎解きをする、その全てのクオリティが非常に高いです。これぞ現代本格。いやぁこれはいい作品ですね、絶版にしておくのは勿体無いです。東京創元社あたりが復刊しないのかな。そうすればこのシリーズの続きも訳されそうなんだけど。

なんといってもまずこの険悪な家族関係でしょう。嫌味皮肉を言うばあちゃんとか息子娘を支配しようとするお母さんとか息子嫁とその嫁旦那のギスギスした関係とか息子の友人たちとのまた関係だとか、こんなメンツでりんご狩りなんてしたくねぇよという集まりがまず秀逸。一人として無駄なく重要な役柄を持ち、機能しているところが素晴らしいです。
500ページという長めの尺の中で、登場人物が動き回り喧嘩しあい関係が変化し、というだけでしっかり読ませるんだから上手いです。それらがちゃんと伏線になっているのも上手いです。ダレそうなところでまた事件を起こすのも上手いです。解決編がめちゃ長いのも読ませます。このクオリティの高さ。
ちなみに名探偵役は、メガネを取ったら美人タイプの隠れ金持ち感情なし冷徹系普段はもっさりな服を着た背の低いお嬢さんです(なにそれ属性持ちすぎ)。まぁちょっと魅力に欠けるんですけどね、こんだけ属性持っているのに。

謎解きもかなり良くて、少々証拠が足りない気もしますが、そこらへんはちゃんと指摘してカバー出来ているので問題ないかなと。500ページの読み応えでしっかり本格ミステリしており、海外現代本格としてはかなり上の出来じゃないかと思います。なるほど、これは各氏が褒めているのも分かります。おすすめ。
なお、作者のジェニファー・ロウは、解説では正体不明みたいなことが書いてありますが、現在ではエミリー・ロッダの別名義であったことが分かっています。ローワンシリーズやデルトラ・クエストなどの児童向けファンタジーで有名なお方ですね。

書 名:不吉な休暇(1987)
著 者:ジェニファー・ロウ
出版社:社会思想社
    現代教養文庫 3021 ミステリ・ボックス
出版年:1990.11.30 1刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/990-d97bd277