輝く断片
『輝く断片』シオドア・スタージョン(奇想コレクション)

雨降る夜に瀕死の女をひろった男。友達もできず顔も醜い孤独な男は決意する。おれやる、全部やる……。「自分がいままで書いた短篇の中でも最も力強い作品」と著者自ら語る表題作「輝く断片」をはじめ、スタージョン・ミステリの最高傑作「マエストロを殺せ」ほか、切ない感動に満ちた名作8編を収録。独特の発想と驚くべき語り口。シオドア・スタージョンのミステリ名作選。(奇想コレクション)

例によって初スタージョンです。全然関係ないですが、実は最近、『影よ、影よ、影の国』をブックオフで、『奇妙な触合い』を近所の古本屋で見つけちゃったんですよ、すごいでしょう、ぐふふふふふ。

……ごほん。

「取り替え子」(1941)
「ミドリザルとの情事」(1957)
「旅する巌」(1951)
「君微笑めば」(1955)
「ニュースの時間です」(1956)
「マエストロを殺せ」(1949)
「ルウェリンの犯罪」(1957)
「輝く断片」(1955)

前半はネタ系おもしろSFで、後半はスタージョン流犯罪小説。この短編集のメインは後半で、確かに傑作目白押しぃ!って感じなんですが、正直なところ、全部似ているせいで、読み終わった瞬間のテンションは低かったです。似たような話を集めた短編集・アンソロジーってだから苦手なんですよね……。

最初の「取り替え子」はテンションの高いユーモアファンタジーで、超笑わせられるわ最後はちょっと良い話風で終わるわで最高でした。続く「ミドリザルとの情事」は壮絶下ネタオチがこれまた面白すぎて笑いが止まりません。「旅する巌」は強引にSFしている作品で……こ、これは収録しなくても良かったんじゃないのかな。

さて後半、「君微笑めば」は奇怪な連続殺人物で、先駆性は認めたいけど今となってはありきたりだしやや冗長です。「ニュースの時間です」は男の異常性の描きっぷりが秀逸で、ニュースに絡めるのが最後ムリヤリだった気がしなくもないですが、これは良く出来ていて楽しめました。
「マエストロを殺せ」はかなりミステリ味が強く、男の異様な執着心とその顛末が大いに読ませてグッド。「ルウェリンの犯罪」は他の犯罪小説と比べてやや滑稽見と皮肉っぷりが強くて割合読みやすく、妙な軽快さが楽しい一品です。「輝く断片」は……う、うん、こういう話嫌いなんですね……。

と今こうしてそれぞれ思い返すとやっぱり良く出来ている秀逸な作品が多いんですが、犯罪小説はどれも社会に適応できないある男の異様な執着性を扱っており、続けて読まされるとまたこのパターンかよってなるので、やはり短編集としては苦手な部類に入ります。あくまで個人的にはこういう組み方は好きではないかなと。総じて悪くはないのですが、あと一歩、決め手に欠ける印象です。
今回も、追記としてサークル用に書いた『輝く断片』のレビューを貼っつけておきます。

書 名:輝く断片(1941~1957)
著 者:シオドア・スタージョン
出版社:河出書房新社
    奇想コレクション 6
出版年:2005.6.30 初版

評価★★★★☆








 「シオドア・スタージョンのミステリ名作選」という触れ込みだが、まぁ異色作家短篇集のようなものだ(『一角獣・多角獣』とは「マエストロを殺せ(「死ね、名演奏家、死ね」)」のみかぶっている)。奇想コレクションのスタージョンなので、当然河出文庫からも出ており、手に取りやすい。
 『輝く断片』に収録されているいわゆるミステリ系列の作品は、大雑把に言うと、クライム・ノベルとか、サイコ・サスペンスとか、そういうものに分類出来る。日本語で言うなら犯罪小説だ。そこには必ず「変人」が登場する。一般社会とはややなじまない感性や考えを持った人間が、自分のこだわりにこだわり続けた結果、周囲の人間との間でズレが生じ、そして悲劇に至る――というもの。そこに悪意は存在しない。ただ、自分のしたいようにした結果、とんでもないことが起こってしまうだけなのだ。パターンとしては全部同じっちゃあ同じなのだが、それでもそれぞれその調理法が異なるため、どれも読者を飽きさせない。
 例えば「君微笑めば」は、奇怪な未解決の連続殺人事件を扱っている。もちろん犯人があり、動機があるのだが、しかしそれは明らかに狂人による犯行だ。ひどく自己中な動機が示されるが、しかしその真相に至るまでを延々と読まされると、殺したくなるのも仕方ないな、と思えてしまう。と共に、誰もが心の奥底に狂気を潜ませているのではないかと末恐ろしくなる。
 「ニュースの時間です」は、ニュースの時間が病的に気になる男が壊れていく様を描いた話。唐突とも言える終わり方は、もはや理不尽とも言える狂気を読者に示す。ふとしたきっかけで人間がどうなってしまうのか、ということをスタージョンはまざまざと見せつける。
 「マエストロを殺せ」では、とあるバンドの目立たない一人が、あることを実行しようと次々に事件を起こしていく。一番ミステリらしいかもしれない。だんだんと狂気じみていく男の固執もさることながら、何よりバンドの顛末を描くストーリーが面白い傑作。個人的には異色作家短篇集版のタイトルも捨てがたい。
 「ルウェリンの犯罪」は一転、ややコメディ調の犯罪小説。自分のプライドを守るため、何か悪いことをしようとするも上手くいかない地味男ルウェリンを描く。ジャック・リッチーの短編のようだ。しかしこれも軽快ではあるが、どこか人間の悲哀が感じられるところがスタージョンらしい。
 最後の表題作、「輝く断片」は、これぞスタージョン流狂気の真髄といったところ。見え見えの結末に向かって一歩一歩と進んでいく様をぜひ楽しんでいただきたい。
 なお、前半三編は、バランスを取るためか、非常に軽快で楽しい短編が収録されている。こちらも面白い。「取り替え子」は赤ん坊型の口の悪い妖精が登場する、どたばた調の一編。「ミドリザルとの情事」は、壮絶な下ネタ落ちが大爆笑(と苦笑)を誘うSFで、ひょっとするとこの短編集の中で一番面白かったかもしれない。以上、傑作に次ぐ傑作を楽しめる、極めて質の高い短編集だと言えるだろう。
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