夜の冒険者たち
『夜の冒険者たち』ジャック・フィニイ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

漆黒の闇の中で橙色の灯に浮び上るゴールデン・ゲート・ブリッジ――そのケーブルを二人の若者リュウとハリーが登っていた。はるか下では期待を込め恋人と妻が見上げる。「砂を噛むような変化のない生活はもういやだ」こんな切実な思いが四人を夜の冒険へと駆り立てた。高速道路での大騒ぎ、警官との追いかけっこ、自分のヌード写真の公開……そして今四人の冒険はここで終りを告げる。自らの存在を確かめるかのようにいたずらの限りを尽した彼らの最終計画とは?限りない情感を込め現代青年のヒューマンな行動を描くサスペンス溢れる異色作!(本書あらすじより)

久々に自分のベスト10を更新するかもしれないような本に当たりました。
平凡な生活に飽きた男女四人が夜な夜な深夜の街のお散歩に繰り出し、それを阻止しようとする警官と追いかけっこする羽目になる……というあらすじがもうツボにダイレクトなんですが。いくぶん時代を感じるところはありますけど、それでもあえて断言しましょう、これは至高の青春冒険小説なのです。綺羅星の如き素晴らしい傑作です。

「死者のポケットの中には」や「大胆不敵な気球乗り」などの傑作短編により夜景と高所の描写に定評のある(自分の中で)フィニイがまずその持ち味を存分に発揮してくれます。夜の街というごく普通の場所を散歩するだけなのにこれほどワクワクドキドキさせられるとはね……。
人の家のブランコをこいでみたり、車通りの絶えた高速道路で寝っ転がってみたり……ということに心から楽しみを覚える主人公を見ていると、俺もやってみてぇぇぇってなるんですよ。読者の冒険心をストレートに刺激してくる1シーン1シーンの美しさが堪りません。そういう小さな“冒険”の持つ楽しさったらないです。読者のやってみたい、けどやらないという気持ちをいい感じに刺激してくるのです。

そんな冒険は見廻りの警官に見つかったことで、順調でなくなるとともに、ますます刺激的なものとなります。最初は追いかけっこ的なものに過ぎなかったものが、だんだん極端というか、警官をからかったりするようになり、なにもここまで警官とバトらなくても……っていう展開になるのですが、これはやはり時代でしょうね。カウンターカルチャーの終焉期に当たる作品だ、ということが大きいと思います。反権威主義的というか。まぁそういうこと気にしない方が楽しめるんじゃないかって気もしますが。

で、なんやかんやあって(読んで)、主人公たち4人は警官と、そして愛する街を相手に大勝負、大仕掛けを繰り広げることになります。もうね、バカですよ彼らは。何やってんだ、そんな自分のこと犠牲にしちゃって。けど愛おしいんです。こういう壮大な遊び心を楽しめるのが小説の良さなんじゃないでしょうか……とか思って読んでいたら最後の方泣けてきちゃいましたね……素晴らしい……。

というわけで、ジャック・フィニイのノスタルジックと美しい描写力とストーリーテリングが結びついた、青春冒険小説の傑作だと思います。お願いですから早川書房さん、復刊してください……出来ればこの和田誠装丁のままで。

書 名:夜の冒険者たち(1977)
著 者:ジャック・フィニイ
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 38-3
出版年:1980.9.30 1刷

評価★★★★★
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