夜歩く
『夜歩く』ディクスン・カー(創元推理文庫)

刑事たちが見張るクラブの中で、新婚初夜の公爵が首無し死体となって発見され、現場からは犯人の姿が忽然と消えていた!夜歩く人狼がパリの街中に出現したかの如き怪事件に挑戦するのは、パリ警視庁を一手に握るアンリ・バンコラン。本格派の巨匠が自身満々、この一作をさげて登場した長編デビュー作。カーの代表作と目される作品のトリックをいち早く使用した密室物ものの秀作。(本書あらすじより)

このあらすじはどうかと思いますけど、とにかく『夜歩く』です。この間新訳が出ましたが、それではなくて、新訳が出たことを機にあわてて積ん読から引っ張り出してきた旧訳版です。本読みは、積んでいる本を復刊されたら負けなのです。なんのこっちゃ。
古い創元なので、ジョンのつかないディクスン・カーですねー。

面白いことは面白いのですが……少々凡庸というか、ありきたりというか、これといって目立つものがないというか、まぁはっきり言って、新訳も色々出て来た2013年に、いまさらカーの作品からこれを読む必要は感じません。カーらしさ&らしくなさを見たいファンが読めば十分なんじゃないかな、と。

トリック諸々は分かってしまう人も多いでしょうね(○○の正体とか自分は普通に驚きましたが、よく考えれば分かりますね、これ)。不可能犯罪は少々不自然。しかし、かなり長尺の解決シーンは話を大いに盛り上げ、犯人の自白も迫真というか狂気に満ちていて実に読ませます。ラストに近づくほど芝居がかってくるのも楽しいです。
ただやはり序盤中盤が地味ですねー。狂人が誰かに化けてるぜ!な要素も出しっぱなしで緊張感に欠けるし、容疑者に話を聞いて回るのもばらばらとしていて集中出来ません。古典ミステリにありがちな語り手の頭の回転の遅さも少々いらっとします。容疑者がそれぞれもっと魅力的なら良かったのかな。

個人的には、フェンシングによる決闘を書いてくれれば、もっと楽しかったんじゃないかなと思いますが、まぁそういうのはカーがまだこの頃は抑えていたから仕方ないですね。全体的に頑張っていることは分かる処女作らしい処女作、という印象です。

書 名:夜歩く(1930)
著 者:ディクスン・カー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mカ-1-17
出版年:1976.7.23 初版
    1995.7.7 26版

評価★★★☆☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/979-b1fe1bdb