枯草熱
『枯草熱』スタニスワフ・レム(サンリオSF文庫)

ナポリで起きた中年男の連続怪死事件をめぐって、捜査の依頼を受けた「枯草熱」の元宇宙飛行士が、男たちの足跡をたどるうちに自ら予想外の出来事に巻き込まれていく確率論的ミステリ。(国書刊行会版のあらすじより)

最近なぜ更新ペースが早いのかというと、答えは簡単、もうすぐ2013年が終わっちまうからであります。今年中に今年読んだ本の感想くらい全部書き終わりたいじゃないですか……と思っていたんですけど、今書いてるこの『枯草熱』を読んだのが1ヶ月前ですからね。おまけに12月はやたらと早いペースで本を読んでしまったので、うん、まぁ、無理でした。ちなみにこの辺からSF率がなぜか上がります。

さて、初レム&初サンリオSF文庫。ちなみに本書のタイトルは、「かれくさねつ」ではなく「こそうねつ」と読みます。というか国書刊行会版ではそうなのです。サンリオ版でもそうなのかは……訳者さんに聞かないと分かんないですね、はい。まぁ広辞苑とか見ると「こそうねつ」なのです。そういうことです。

イタリアでの連続怪死事件、被害者に共通していたのは枯草熱(つまりは花粉症。この本が訳された頃は花粉症ってそんなにメジャーじゃなかったんですねぇ)だった……という話で、ほとんどSFではなくミステリなんですけど、読み心地は哲学書というか数学書みたいな感じで、どうにも不思議な作品です。わりあい読みやすいとは思いますが、面白いというのとは違いますね、はっきり言うと。

事件の捜査に囮(?)として協力した同じく枯草熱のアメリカ人宇宙飛行士が、被害者の一人と全く同じ行動をし、その後フランスの有名な学者に相談しに行く、という展開ですが、序盤の囮捜査中に事件の説明が全くなされないのはやや辛いです。一切の説明がなく、この人何してんだろ……とひたすら思う70ページ。はっきり言って退屈です。枯草熱事件の内容がようやく説明される第三部までがまー長いこと長いこと。
第二部でフランスに移動中の主人公が空港テロ事件に巻き込まれたりもするので、ちょっとした動きがないことはないのですが、正直言ってこれもあまり本筋には関係ないんですよね(意味はありますが)。第三部はほとんど事件の説明と検討に終始しているので、終盤まで特に動きが無く、やはり盛り上がりには欠けます。

ただ、この事件自体は非常に特異で奇怪なので、説明や検討だけでも読んでいて結構面白いんです。話は次第に哲学的・数学的になっていくので、だんだんややこしくなってくるのですが、これもそんなに読みにくいわけでもありません。終盤では主人公が悪夢のごとき体験をすることになり、この描写も真に迫っていて非常に読み応えがあります。明かされる真相も連鎖的な様が面白く、一風変わったミステリ風味のものですし、未来への警鐘的な皮肉さもあって良いです。
そういうわけなので、読み終わってみると、案外面白かったジャーンと思ってしまうんですよねぇ。読んでみないと読み心地が分からない、かなり独特な一品でしょう。序盤の読みづらさだけが難点かなと。積極的におすすめするような作品ではありませんが、なかなか印象に残るお話でした。

ちなみに、「枯草熱」は、事件の大事な一要素であるとはいえ、作中であまりその点が強調されないので、タイトルとしては微妙かなと思います。原題ではなく英題はなかなか上手いタイトルなんですが、こちらはこちらでちょっとネタバレっぽいんですよね……難しい。

書 名:枯草熱(1976)
著 者:スタニスワフ・レム
出版社:サンリオ
    サンリオSF文庫 27-A
出版年:1979.9.25 初版

評価★★★☆☆
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