ゲイルズバーグの春を愛す
『ゲイルズバーグの春を愛す』ジャック・フィニイ(ハヤカワ文庫FT)

由緒ある静かな街ゲイルズバーグ。この街に近代化の波が押し寄せる時、奇妙な事件が起こる……表題作他、現代人の青年とヴィクトリア朝時代の乙女とのラヴ・ロマンスを綴る「愛の手紙」など、甘く、せつなく、ホロ苦い物語の数々をファンタジイ界の第一人者がノスタルジックな旋律にのせて贈る魅惑の幻想世界。(本書あらすじより)

収録作品
「ゲイルズバーグの春を愛す」
「悪の魔力」
「クルーエット夫妻の家」
「おい、こっちをむけ!」
「もう一人の大統領候補」
「独房ファンタジア」
「時に境界なし」
「大胆不敵な気球乗り」
「コイン・コレクション」
「愛の手紙」

言わずと知れたジャック・フィニイの代表短編集。なぜかフィニイを『夢の10セント銀貨』などというどうしようもない作品(好きですけど)から読み始めてしまった自分ですけど、ようやくこれを読むことが出来ました。
凝ったストーリーも鋭いオチもない、ただただノスタルジックや切なさに満ちた短編集。読んでいて包まれるような温かさが感じられ、どれも淡々とした話ながら物語の中に引き込まれます。読者の罪深いすさんだ心が浄化されるのです。傑作集……というほどではないですけど、印象に残る作品が多いな、という感じですね。目次開いて各話のタイトル見たらどういう話だったかが全部ぱーーっと思い出せたんですが、なかなかすごいことだと思いますよ、これは。

スケスケ眼鏡を手に入れたらモッサリした女の子が超美人だったことに気付いた男の話「悪の魔力」、ヴィクトリア期の家を現代に蘇らせる「クルーエット夫妻の家」、死刑執行前に刑務所の壁に絵を描く男の話「独房ファンタジア」、わりとしっかりしたオチのあるタイムトラベル物「時に境界なし」、空を飛ぶことに憧れた男が気球を作って乗るだけの話「大胆不敵な気球乗り」、時空を超えた恋愛小説「愛の手紙」が良かったかな……ってほとんどじゃないですか。
しかしフィニイさん、こんなに19世紀をやたらと持ち上げて入れ込んで惚れ込んで感情移入しているようでは、さぞかし現代は生きづらかったでしょうね。実際、ちょっとひとりよがりというか、理想を理想化しすぎている面はあると思うんです。鼻につく人もいるかもしれませんね。それこそがフィニイの魅力なんですが。

ベストは「愛の手紙」かな……いや「クルーエット夫妻の家」も結構お気に入りなんだよなぁ。あ、いや、「大胆不敵な気球乗り」も……(はっきりせい)。

というわけでこれは普通におすすめです。ちなみに「コイン・コレクション」は、長編『夢の10セント銀貨』とほとんどストーリーが同じでした。短編を長編化したものだったんですね。
ついでに言うと、今のところジャック・フィニイの短編では「死者のポケットの中には」の圧倒的一位感は揺るぎません。あれは傑作ですよ、マジで。『レベル3』読んでいないから偉そうなこと言えませんけど。

書 名:ゲイルズバーグの春を愛す(1962)
著 者:ジャック・フィニイ
出版社:早川書房
    ハヤカワ文庫FT 26
出版年:1980.11.30 1刷
    2003.10.31 18刷

評価★★★★☆
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