法廷外裁判
『法廷外裁判』ヘンリイ・セシル(ハヤカワ・ミステリ文庫)

会社社長のロンズデイル・ウォルシは嘘が大嫌いな男だった。その彼が殺人罪で告訴され、終身刑を宣告された。おれは証人の偽証によって有罪になったんだ! 彼は不撓不屈の精神で脱獄を計画し、まんまとそれに成功した。さらに、かねて白羽の矢を立てていた名判事を自宅に監禁し、誘拐もどきの手段で、事件の関係者を判事邸へ集めた。そこで彼は、裁判のやり直し、すなわち法廷外の再審を要求したのである! 目をまるくする判事や弁護士をしりめに、ついに珍妙な裁判の幕は上った。ブラック・ユーモア風に展開する異色法廷ミステリの傑作。(本書あらすじより)

初セシルです。傑作が多いと評判ですが、あらかた絶版になってしまっている現在ではかなり入手しにくい作家ですね。創元推理文庫の古いやつとかむちゃくちゃ高くなってるし……。
さて、そんなセシルの代表作といえば、たぶんこの『法廷外裁判』でしょう。極端に嘘が嫌いで、嘘を聞くと我慢できずに顔が真っ赤になってしまうという男(といって別に嘘自動発見的な能力なわけではないですけど)が、偽証だらけだったという自分の裁判のやり直しを求めてむりやり脱獄し弁護士やら判事やらを集めて裁判を行わせるというはちゃめちゃなストーリー。全編ユーモアに満ち満ち満ち満ちていて非常に楽しいミステリです。ユーモラスな裁判の進行とともに様々な隠れた事実が明らかになっていき、ラストにどんでん返しが間違えている……というわけで実に傑作だと思うのですが、自分としてはあと5年早く読みたかったなと思いました。ある程度読んでいる人だと、先が少し読めてしまうのですよね。もったいない……。

とにかくユーモラス。文体から受ける雰囲気は英国物ユーモア・ミステリに近いといっていいほど楽しいものがあります。ま、これだけで自分としてはもう満足なのですが、その軽快な会話から繰り広げられる丁々発止のやり取りも見ものです。主人公のウォルシのライヴァル的ポジションの、女傑としか言いようがないバーンウェルという女性がいるのですが、彼女がまぁ嘘つきでしてねー(笑) 彼らの、愛しつつ憎む、みたいな罵り合いも非常に楽しいです。ひねくれ、かつブラックユーモラスな結末も、彼らのキャラクターあってこそで、読後のにやっとしてしまう感じはたまりません。

またネタバレになってしまうのであまり言えませんが、かなり大胆な仕掛けがなされているところも見所の一つでしょう。本当にこうネタバレになってしまうので言えないのが悔しいのですが、隠し方が実にうまいのです。絶版にしている早川書房さんの罪は重いですよ、えぇもう。

惜しむらくは、法廷外裁判終了後の展開がやや間延びしていること、および法廷内で明らかになる事実にそれほど意外なものがなく、ただ嘘でしたーごめんねー、で終わっちゃうということでしょうか。法定ミステリ的な裁判内でのどんでん返しを期待するとやや痛い目に合います。ま、これは話の展開上構わないのですが、その後のオチまでがやや長く感じられました。イギリスの法律制度についての説明やらウォルシの責任問題の追求など、必要なのは分かるんですが、そこまでがとにかく怒涛の展開だっただけに、やや失速してしまったかな、というところ。勢いのまま終わらせて欲しかったかな、と思わなくはありません。

とは言え、やはり傑作であることは間違いないでしょう。出来ればミステリ初心者の方にこそ、図書館でもなんでもいいので借りてきて読んで欲しい作品かなと思います。

書 名:法廷外裁判(1959)
著 者:ヘンリイ・セシル
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 56-1
出版年:1978.4.30 1刷

評価★★★★☆
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