生ける屍
『生ける屍』ピーター・ディキンスン(ちくま文庫)

医薬品会社の実験薬理学者フォックス。カリブ海の島に派遣されるが、そこは魔術を信仰する島民を独裁者が支配し、秘密警察の跳梁する島だった――。陰謀に巻き込まれ、人体実験に加担させられるフォックス。だが事態は大きく変転する。囚人との逃亡、クーデター、そして…。果たしてフォックスを嵌めた犯人は?幻の小説、復刊。(本書あらすじより)

ついに復刊してしまった(コラ)ピーター・ディキンスン『生ける屍』です。
いやでもこの作品、やたらと古書価は高いですけど、あまり良いウワサを聞かないような、と思って恐る恐る読み始めてみましたが……。う、うぅん、これは評価が難しい作品だ……自分はこういうのは苦手としか言い様がないですね……。
舞台はカリブ海の独裁国家。人々は土着信仰的な“魔術”の存在を信じ、支配者は事実魔術を使っている(らしい)……という設定は面白いんですけど。
独裁政治の風刺だとか科学と魔術の対比だとか「生ける屍」というテーマ(そして主人公)だとか、まぁ色々と読み方はあるんでしょうが、端的に言って話が面白くないのです。というか楽しめないというか。実験のことにしか関心のない科学者がカリブ海の小国に囚われ、魔術の力で状況を打開する……と話だけ抜き出せば楽しいのにダラダラダラダラとした物語に全く入り込めず。

全くヒーロー的なところのないクソ真面目科学者である超受動的主人公は主体性を持たない“生ける屍”で、嫌がってやらされたはずの人体実験も段々ガチでやっちゃっていつもの鼠の実験と同じだぜみたいなこと言い始めるし、革命とか政治よりも鼠の方が好き、という相当な人間です。うん、こういう意気地のない人間がしだいに変わっていく様を見るのは確かに楽しいですね。彼の態度の変化故に迎える後半の脱出劇と、彼独自の正義感に基づいたラストはなかなか味わい深いものです。

ところが登場人物のセリフや主人公の考えがいちいち長いし哲学的ってかだらだらしているもんだから(あくまで自分は)読んでいてすごく退屈だったんですよ。せっかく面白いストーリーもこうも説明臭く風刺臭くやられるとなんかどうでもよくなってきちゃうんだよなぁ。

というわけで、個人的にはオススメしにくい作品となってしまいました。非常に独特な、淡々としてぼんやりとした、かつ突き放したような雰囲気にいったんはまってしまえば、好きになれるんだろうと思います。とりあえず次は大傑作らしい『キングとジョーカー』を読んでみますかねぇ。

書 名:生ける屍(1977)
著 者:ピーター・ディキンスン
出版社:筑摩書房
    ちくま文庫 て-13-1
出版年:2013.6.10 1刷

評価★★☆☆☆
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