ムーンズエンド荘の殺人
『ムーンズエンド荘の殺人』エリック・キース(創元推理文庫)

探偵学校の卒業生のもとに、校長の別荘での同窓会の案内状が届いた。吊橋でのみ外界とつながる会場にたどり着いた彼らが発見したのは、意外な人物の死体。さらに、吊橋が爆破されて孤立してしまった彼らを、不気味な殺人予告の手紙が待ち受けていた──。密室などの不可能状況で殺されていく卒業生たち、錯綜する過去と現在の事件の秘密。雪の山荘版『そして誰もいなくなった』!(本書あらすじより)

新刊との戦い終了まであと5冊。それが終わったらひたすら積ん読崩しです、ようやく。いやー読みたい本が溜まっていること溜まっていること。
さて、『ムーンズエンド荘の殺人』です。現代版『そして誰もいなくなった』という恐れ知らずのキャッチコピー、探偵学校の卒業生とかいう痛過ぎる設定などにより極めて胡散臭い一冊。とは言え2013年というこの時代にこんなものを書いた作者エリック・キースは偉いし、こんなものをわざわざ訳出してくれた東京創元社様の威光は山よりも高く海よりも深いのです。違うかな。

なのですが……。
いやね、2011年に「雪の山荘版『そして誰もいなくなった』」を書いた努力は大いに認めたいし、殺された状況を密室にしたりとクリスティーとの差別化を図っていて偉いとは思いますが、いかんせん面白くないものはどうしようもないんですよ。読んでいてテンションがあがらないというか。所詮はパズル作家の作品ということかなぁ。

「そして誰もいなくな」るトリック自体は良く出来ているし、手がかりも1つかなりなるほどというのがあったので悪くはありません。山荘に集まる9人の背景にマフィアを入れて上手く繋がりを作り、動機を過去と現在の両方に可能性を持たせつつキャラ付けしているのも良かったですね。全員探偵学校の卒業生というどこのQだよと言わんばかりの設定ですが、あまりそれにこだわらず、全員に現在大人としての職業やらしがらみがきちんとあったので、そんな適当な設定ではなかったなという印象です。

ただまぁ、見事に緊迫感がないんです。実に淡々と人が減るのです(まさにパズル)。みんな探偵学校の同窓生という設定だからそりゃあ場慣れしてらっしゃるんだろうし、いちいちギャーギャーわめかないのも結構ですけど、小説として面白くはなりませんよね。ここまで本家を模している以上、サスペンスの傑作である『そして誰もいなくなった』にある程度は並ぶようなサスペンス感は作らないといけないんじゃないでしょうか。
それに密室トリックは全体的にもうアレとしか言いようのない出来で、ついでに各人の殺され方も面白くありません。中途半端に本家の殺され方と似せている(最初の被害者が食事中の毒殺、とか)のも中途半端。ラストに至っては言えませんがパクりじゃないですかこれ(解説にあるので注意)。「劇的な演出」が下手なんです、はっきり言って。ある程度バカバカしい死に方を緊迫感を持って描けたクリスティーはやはりすげぇな、と強く思いました。

というわけで全体的には残念な作品。この人の2作目には色々な意味で期待したいところではありますけどね。

ちなみに『そして誰もいなくなった』は英米で過去4度(+ロシアとかインドとかよく分からないやつ)映画化されています。それぞれ舞台が異なっており、1作目は島、2作目は雪山、3作目は砂漠のど真ん中、4作目はサファリという、まぁよく考えたなという感じ。雪の山荘版『そして誰もいなくなった』である2度目の映画化作品、ジョージ・ポロック監督『姿なき殺人者』(1965)は、ラストの演出こそ飛び抜けて優れているものの、それ以外の点ではそこまで面白いというわけではないですね。
ついでに言うと、4度目の映画化作品アラン・バーキンショー監督『サファリ殺人事件』(1989)は、サファリ版『そして誰もいなくなった』というべきトンデモ作で、笑いっぱなし必至のケッ作(真面目に作っているっぽいだけにウケる)なので、機会があればぜひ一度ご覧下さい(ただし期待して見ると辛いです笑)。

書 名:ムーンズエンド荘の殺人(2011)
著 者:エリック・キース
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mキ-11-1
出版年:2013.6.21 初版

評価★★☆☆☆
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