雨の国の王者
『雨の国の王者』ニコラス・フリーリング(ハヤカワポケミス)

アムステルダム警察のファン・デル・ファルク警部の元に奇妙な依頼が持ち込まれた。カシニウスと名乗るその男は、失踪した社長の一人息子ジャン・クロードの捜索を「個人的に」依頼したいという。おそらくは権力に近い地位にある男の前に、警察上層部も黙認を強いられる。ファン・デル・ファルクは一人支援も受けられぬまま、ドイツ、オーストリア、フランスと追いかけっこする羽目に。
彼を追う中で、ファン・デル・ファルクは次第にジャン・クロードのことを知っていく。金持ちでハンサム、スポーツや語学の豊かな才能に恵まれ、何不自由のない暮らしを送っていたジャン・クロードを理解するそのカギは、彼が書き写し、家に残して行ったというボードレールの<憂愁>という詩に隠されていた。そして、彼の隠れ家へと辿りついたファン・デル・ファルクの前に現れたのは……。(ブログ『深海通信』のあらすじより)

公式のあらすじでも良いんですけど、ネタバレとまではいかなくても、序盤の衝撃がやや減ってしまうと思うんですよ、これを読むと。なかなかショッキングなオープニングなので。というわけでこちらを引用しました。

まぁこのようなあらすじなので、普通の警察小説ではないですよね。テイストとしてはどちらかというと一人称の私立探偵小説でしょう。行方をくらましたジャン・クロードの心情を想像しつつ、彼の奥さんやらを会社の幹部やらを相手にしながらドイツ、オーストリア、フランスを飛び回る警部の動きを読者が追うだけ。このバタバタした感じが序盤は読者を楽しげに(といって雰囲気が明るい小説ではないんですが)引っ張って行ってくれます。

何というか、実に感想が書きにくい本なんですよ。実は話の結末は部分的に冒頭で示されており、物語の終盤は明らかにそこへ突き進んでいくので、意外性はほとんどありません。ただ幹部の企みは何かという謎が全編通じて読者を引っ張ってくれるため、話自体は一見ばらけてるようでかっちりしています。
その他オーストリアのスキー場でずっこけたり、息子の奥さんに迫られたりと、抜き出せばドタバタコメディみたいな感じですが、警部がうじうじ考えてばかりなので文章はどちらかというと暗くて……色々混ざっていて説明し難い雰囲気が漂っていますよね。この読んでいる間の感覚はちょっと他では味わったことがないかもしれません。

というわけで妙に印象に残りはしますが(たぶんこの感想読んでも雰囲気全然伝わりませんね、難しい)、総じて言うなら後半はやや失速した感があるし、個人的な好みで言うとあまりにひねりがないというか、オチなんでバラしたしという感じなので、まぁ可もなく不可もなくという感じでしょうか……。フリーリングの評価はあと数作読んでからということにします。何とも歯切れの悪い終わり方。

書 名:雨の国の王者(1966)
著 者:ニコラス・フリーリング
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1096
出版年:1969.12.15 1刷

評価★★★☆☆
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