夜明けの睡魔
『夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波』瀬戸川猛資(創元ライブラリ)

様々なタイプの作品が陸続と出現し、昔の単純なジャンル区分では捌ききれなくなってきた現代ミステリ。“パラダイムの転換”は推理小説の世界でも着実に進行しつつあるのだ。こういう混沌とした状況のなかで、本当に面白い作品を独特の語り口で紹介しようと試みた、俊英・瀬戸川猛資の代表的著作が装いも新たに甦る。(本書あらすじより)

1987年に単行本として出版されたものが、1999年に創元ライブラリで文庫化、その後絶版でしたが、今年2013年1月に再版されたものです。海外ミステリの書評集、ですね、ざっくり言うと(ブログ内ジャンルをとりあえず「国内ミステリ」にしたけど違うよなぁ)。絶版にしておくには実にもったいない一冊です。

構成は、前半がミスマガに1980年から1982年にかけて連載された「夜明けの睡魔」、本格ものを中心に、現代のミステリを概観するもの。新刊書評的な側面もあったのでしょうかねぇ。で、後半はミスマガに1984年から1985年にかけて連載された「昨日の睡魔/名作巡礼」、名作古典ミステリを今一度読んでみて、どんなものかということを論じてみた、というものです。
1980年代前半の連載書評を集めたもので、当然のことながら今となっては“常識”となっているようなこともたくさん示されています。コリン・デクスターの苦悩する探偵としての魅力だとか、ロスマクは本格ミステリ的にも面白いとか、『矢の家』は日本と英米では読みどころが異なり、日本でいまいちよろしく受容されていないのは江戸川乱歩のせいだとか。それだけミステリの見方に影響を与えた人だということなのでしょうね、すごいことです。

で、まぁ、話には聞いていたのですが、この瀬戸川猛資さんの文章がまーいいんですよ、本当に。どちらかというととっちらかったような文章で、あぁこれ面白いよねーみたいなことをむにゃむにゃ書いているだけ。それだけなんですが、作者の興奮が直に伝わってくるかのような文章で、めちゃくちゃ読みたい気持ちにさせられてしまうんです。またしても欲しい古本が増えちゃったじゃないですか(実に害悪な本)。
こういうものを読むと、うまい書評の第一条件はやっぱりあらすじなんだなぁと思います。ネタバレをせずに、どこまでその本の魅力を語れるか。

というわけでこれは良著。こうなると『夢想の研究』の方も読みたくなってきますね……か、買ってこよう。

書 名:夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波(1987)
著 者:瀬戸川猛資
出版社:東京創元社
    創元ライブラリ Lせ-1-1
出版年:1999.5.28 初版
    2013.1.18 2版

評価★★★★☆
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