探偵ダゴベルトの功績と冒険
『探偵ダゴベルトの功績と冒険』バルドゥイン・グロラー(創元推理文庫)

20世紀初頭に入り爛熟期を迎えた文化都市ウィーン。音楽と犯罪学に打ち込む素人探偵ダゴベルトは、友人グルムバッハ夫妻との晩餐後、葉巻と珈琲を楽しみつつ、ハプスブルグ朝末期の社交界で起きる様々な難事件解決の顛末を披露する。「クイーンの定員」にも選出されたダゴベルト探偵譚から9篇を精選。オーストリアのコナン・ドイルと称される著者の本邦初となるオリジナル短篇集。(本書あらすじより)

「上等の葉巻」
「大粒のルビー」
「恐ろしい手紙」
「特別な事件」
「ダゴベルト休暇中の仕事」
「ある逮捕」
「公使夫人の首飾り」
「首相邸のレセプション」
「ダゴベルトの不本意な旅」

とりあえず目次。今回は各短編の感想はなしです。気力的に。
グロラーさんに「オーストリアのコナン・ドイル」なんて煽り文句が付いているせいで、どうしてもホームズ譚との違いを意識して低い評価になってしまうなぁ……。クラシックミステリに飢えている人向け以上のものではないんじゃないでしょうか。これを読むならホームズを読みましょう。

上流階級の人間であるダゴベルトは、悩める上流階級の人々の相談を受け、上流階級の人々の評判に傷のつくことのないよう事件を決着させます。法に即した解決というのではなく、あくまで世間体・体面を重んじた解決(説得とかもみ消しとか)に持っていくのが面白いところ。「オーストリアのコナン・ドイル」なので、フェアな謎解きというよりは冒険譚よりです。まぁダゴベルトさんはそこそこの年齢の紳士なので、パワフルに行動するというよりはコネとか地位とか公文書とかを使って調査するんですけどね。その調査結果が皆の前で最後に語られるというわけです。ダゴベルトさんの手並みは確かにお見事でしょう。
どうでもいいですが、警察顧問(上級警部とも訳されていたっけ)の人は面白かったですね。

ダゴベルト「矛盾があったのに気付きましたか」
(ダゴベルトが優秀と評する)警察顧問「いや、私はいま偽造紙幣の問題に集中しなくてはならないから、こちらの事件に集中するわけにはいかない。あえて集中しないようにしているのだ。だから全く気付かなかった」
ダゴベルト「なら仕方ありませんね」

こっ、こんな言い訳がまかり通るのか……(そっち?)。
えー話はそれましたが、とにかく、古き良き探偵小説なのです、が。

で、話は突然変わりますが、以前とあるホームズ評で、「ホームズは下層の貧しい人々とも国王をはじめとする上流階級の人々とも物おじせず付き合おうとする。身分社会において身分を超えた“探偵”という存在であったことが、彼をヒーローたらしめたのだ」(大意)というのを読んだことがあります。
その時は何とも思いませんでしたが、ダゴベルトを読むとその指摘、ホームズのかっこよさが痛いほどよく分かるんです。結局ダゴベルトはつまんないお偉いさんであって、庶民のヒーローにはなりえないんじゃないかと。ハイソのハイソによるハイソのための探偵。もちろん探偵小説の最高峰であるホームズと比べりゃ見劣りするのは当然ですよ、当然ですけど、そう思わずにはいられないんです。

いや、つまらなくはないですよ。旧帝国っぽい雰囲気がオシャレだし。でも、もう少しユーモアがあっても良かったんじゃないですか。ダゴベルトさん、ちょっとクソ真面目すぎる&知識ひけらかしたがりっぽい&すべり芸が多くて読んでいて楽しいとは言いかねるし……。

というわけで、ダゴベルトは、悪くはないんだけど、物足りなかったというのが個人的な感想。冒険譚の主人公が上流階級の堅物爺さんではダメなのです。そもそも謎解きとかもちょっとしょぼいし。全体的にどの短編も雰囲気が似ていて飽きるし。窃盗とか詐欺ばっかりじゃ退屈だし。と久々に文句で締めます。おかしいなぁ、評判悪くないのに……。


書 名:探偵ダゴベルトの功績と冒険(1910~1912)
著 者:バルドゥイン・グロラー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mク-20-1
出版年:2013.4.26 初版

評価★★☆☆☆
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