夜に生きる
『夜に生きる』デニス・ルヘイン(ハヤカワポケミス)

禁酒法時代末期のボストン。市警幹部の息子ながら、今はギャングの手下になっていたジョーは、強盗に入った賭博場でエマと出会う。二人はたちまち恋に落ちるが、彼女は対立組織のボスの情婦だった。やがて起きる抗争。その渦中、エマに惚れていたがためにジョーの運命は大きく狂っていった……街の無法者から刑務所の囚人へ、そしてそこから再びのし上がらんとする若者を待つ運命とは?激動の時代を腕一本で乗り切ろうとするギャングたちの生きざま。(本書あらすじより)

今日から新刊の感想が多めです。
ルへインってまだ短編集しか読んでいなかったはず……『コーパスへの道』か。非常にアメリカ人作家らしい作風だなぁと思ったような気がします。というわけで初長編。『運命の日』の続編的位置づけらしいです(主人公が兄弟なんだよね)が、ほとんど接点はないんじゃないでしょうか。たぶんこれから読んでも問題ありません。あとテイストも全く違うようだし。

禁酒法時代を舞台にしたギャング物。ストーリー自体はかなりベタというか、王道っぽいんですが、やっぱり王道は読ませるし面白いですね。ルヘインの乾いた文章も話にあっていて、一介のチンピラだったジョーという一人の無法者が大物のギャングとなっていく過程、彼の人生がある地点まで描き込まれ、強烈な余韻とともに物語が終了します。
ジョーを中心に多数の登場人物と多数の地域が出て来る大河的なストーリーで、あぁ俺やっぱり登場人物が多くて使いまわす感じの小説が好きなんだなぁとつくづく感じました。大河ものの魅力の一つは端役だと思いますが、各キャラ地味ながら個性が際立っていて良いですね。”夜に生きる”ことから逃れられない人々の生き様が、読者の予想を裏切らず丹念に容赦なく語られていくのです。

……という感じで大いに堪能したんですが、じゃあどれほどの話かと聞かれるとそれほどの話でもない気がするし、いったいどの程度自分がこの本を推したいのかがイマイチよく分からない、というのが本音で……。あと一歩が欲しいんです、が、自分にとって何が欠けているのかがピンと来ません。うぅむ、難しい。たぶん、物語の「波」がちょっとはまらなかったんだろうなぁ(具体的に何と聞かれると困るけど)。

とTwitterで呟いたところ、このようなコメントをいただきました。
「大河小説をダイジェストで紹介された感も受けました。色々出てくる人物やそれらと主人公との関係性が熟成されないまま断片的に使い捨てられていって、大きな物語として立ち上がりきらない感じで。」
おぅ、なるほど、それですよ。大きな物語として立ち上がりきらない。登場人物が固定される前に出入りするのは、ギャングの生き様を描きたい作者の狙い通りなのかもしれませんが、読者からすると物語に入り込みにくく、やや突き放されたように思えてしまうんです、と自分は感じたんです、たぶん。

ま、しかし、ルへインの魅力が分かる一冊でしたね。今まであんまり興味のわかなかった作家なんですが、代表作くらいは当たってみようかなぁ。

書 名:夜に生きる(2012)
著 者:デニス・ルヘイン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1869
出版年:2013.3.15 1刷

評価★★★★☆
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