三つの棺
『三つの棺』ジョン・ディクスン・カー(ハヤカワ・ミステリ文庫)

生命に関わる重要な話があるので後日訪問したい――突然現われた黒装束の男の言葉に、酒場で吸血鬼談義をしていたグリモー教授は蒼ざめた。三日後の雪の夜、謎の人物が教授を訪れた。やがて教授の部屋から銃声が聞こえ、居合わせたフェル博士たちがかけつけると、胸を撃ちぬかれた教授が血まみれで倒れていた。しかも密室状態の部屋から、客の姿は煙のごとく消えていた……史上名高い〈密室講義〉を含むカー不朽の名作!(本書あらすじより)

ようやくカーの代表作を片付けました(でもまだ『かぎ煙草』とか『帽子』とか『囁く影』とか『ビロード』とか残ってる)。カー読了としては11作目。個人的にカー名義よりディクスン名義の方が面白い(非常に適当な見解)という思い込みがあるのですが、はたして本作はどうか。

うーん……言いたいことは色々あるんですけど、とりあえずなぜこれがカーの代表作なのかがイマイチよく分かりません。代表作たる貫禄は感じるし、トリックも実際すげぇよく考えたなこれさっすがとは思いましたし、感心したんですが、ぶっちゃけ読んでてあんまり楽しくないなぁと。

密室ものとしてはこれ以上ないほど良く出来た作品であることは間違いないかと思います。いったい犯人はどうやったんだこれ、と問答無用で読者に思わせる非常に堅牢な密室。トリックの面から言うと、自分はこの手のトリックが好きなので結構気に入っています。まぁ何箇所もいやそんな都合良すぎるわぁとツッコミたいのは山々ですけど、カーは何というか遠慮なく密室もののための密室を作ってしまうような作家なわけですし、それは一旦置いておきましょう。特に2つ目の事件の完成度はすごいと思います。これは全く気付きませんでした(全然違う可能性を考えてました)。100点をあげてもいいかも。

じゃあどこが良くないのか、というと、まずこの堅苦しい雰囲気がどうにも楽しくないんです。翻訳によるところも大きいとは思いますが、やっぱり原文に笑いが足りないんじゃないかなぁ。自分はカーのバカバカしい雰囲気が大好きなので、生真面目っぽくなるとなんか途端に面白くなくなるように思えてしまうんです(あくまで個人的な意見ですよ)。そういや『火刑法廷』も真面目すぎて……いやそれは別の話。
まぁそのちょっとお堅い雰囲気あってこその「三つの棺」というオカルト話があるわけですよ、例によって。死者の復活とか東欧の何とかとかそういうやつ。それはいいんですけど、話を引っ張る要素や盛り上げる要素としてあんまり機能していないような気がします。小説全体の背景を支配するおどろおどろしい話となっているのではなく(そのあたり『火刑法廷』は上手いよね)、あくまで「挿話」に留まっているというか。小道具として出てくる絵なんかを効果的に使えば、もっと話のテンションを上げられたのではないかと思えるだけに、ここはもったいないところ。

というわけで、楽しめはしたけど、もうちょっと頑張ってほしかったかな。要は「退屈」ということです。いやそこまで退屈ではないけど。文句垂れ流してしまいましたが、別にそんなつまらなかったわけではないし。標準カーくらいの満足度なんじゃないかなぁ。
ちなみにですが、例の「密室講義」はめちゃくちゃ面白かったです。講義の内容ももちろんなんですが、メタっぽい笑いがあったり、あちこちにくすぐりがあったりして、まぁ読ませるんですよ。以前ヘイクラフト編の評論集で読んだことはあったんですが、良いですね、やっぱり。ネタバレの嵐なのは、うん、さすがにどうしようもないか……。

書 名:三つの棺(1935)
著 者:ジョン・ディクスン・カー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 5-3
出版年:1979.7.15 1刷
    2004.1.15 16刷

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/948-6e079a88