『兄の殺人者』D・M・ディヴァイン(現代教養文庫)

「サイモン?……来てもらえるか?」 霧の夜に鳴った電話の声は確かに兄オリバーのものだった。しかしオフィスに行った弟が見たのは兄の死体。兄が恐喝していたと思われる証拠が出て、サイモンの知人が逮捕される。兄の名誉のため、知人のため、調査に乗り出すサイモン。
アガサ・クリスティーが「最後まで読んで楽しめた、極めて面白い犯罪小説」と称賛したディヴァインの処女作。(本書あらすじより)

ディヴァインのデビュー作です。デビューの経緯は有名な話ですが、なんでも大学教授対象のミステリ応募コンクールがあり(優秀作品は出版されるという豪華企画)、その中でこの『兄の殺人者』はクリスティの絶賛を受けたといいます。しかし、ディヴァインは大学の事務員だったため、受賞はされなかったとか。ただ、おかげで出版社の目に止まり、刊行されることとなったわけです。なんといううらやましい話。

肝心の内容ですが、いい作品だと思います。前半がややだれるんですが、本格的に犯人探しに取り組む後半になると、がぜん面白くなります。ミスディレクションが効果的で、犯人が暗示されているとおりではないんだろなぁとは思っていましたが、まさかあの人だとは思いませんでした。解説にもあるとおり、ディヴァインは「意外な犯人」がホント上手ですね(冷静に考えりゃ、コイツしかいないのに……)。ただ、××がサイモンの××なんだろな、ってのは気付けたんじゃないでしょうか。それにしても、なんとなくクリスティに通じるものがあります。60年代にこんな本格を書き始めた人がいるとは意外です。

しかし個人的には、『悪魔はすぐそこに』『五番目のコード』の方が面白いと思います。処女作ということで、まだ捜査の描き方が慣れていないというか、単純に容疑者宅をまわっていくという雰囲気があるのはおしいところです。しかし、ディヴァインの作品にしては低い、ってことであり、一般水準からみれば十分良質の作品だ、ってのはモチロンなんですけど。

書 名:兄の殺人者
著 者:D・M・ディヴァイン
出版社:社会思想社
    現代教養文庫 3041
出版日:1994.1.30 1刷
     1995.8.30 3刷

評価★★★★☆
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