フロスト気質 上 フロスト気質 下
『フロスト気質』R・D・ウィングフィールド(創元推理文庫)

ハロウィーンの夜、ゴミの山から少年の死体が発見されたのを手始めに、デントン市内で続発する難事件。連続幼児刺傷犯が罪を重ね、15歳の少女は誘拐され、謎の腐乱死体が見つかる……。これら事件の陣頭指揮に精を出すのは、ご存じ天下御免の仕事中毒、ジャック・フロスト警部。勝ち気な女性部長刑事を従えて、休暇返上で働く警部の雄姿をとくと見よ!大人気シリーズ第4弾。(本書上巻あらすじより)

いよいよ6月、フロスト警部シリーズ第5作『冬のフロスト』が(夏だというのに)出たので、慌てて未読の『フロスト気質』を片付けました。分厚いから、積ん読棚がごそっと減りましたよごそっと。 
いやぁ、相変わらずめっちゃ面白いですね、フロストは。フロスト警部シリーズの安定っぷりが感じられる一冊でした。今作は特にフロストの人情味を強調するシーンが多く、まぁあざといっちゃあざといのですけど、こういうのをみんな読みたいんだから別に構わないんです(だよね?)。今回も大いに楽しめました。

大きな特徴は、過去3作ではフロストと敵対する部下が毎回一名登場しているのですが、今回は長いせいかそれが二名となっているところでしょうか。リズ・モード部長刑事(嫌な女だと思っていたのにキャシディ登場後全然嫌な奴じゃなくなった)とキャシディ警部代行。下巻は特にキャシディうぜぇなぁで読ませている感すらありますね。いやもう超うざいのです。
リズ・モードは、女性ということで軽んじられるシーンが序盤には多く出て来ます。一方フロストはセクハラをしまくりこそすれ、彼女の能力を馬鹿にすることはないんですよね(さっすがフロスト)。バートンが彼女をモノにできるかという場外乱闘が後半はかなり笑わせ、こちらも相当面白いです。だんだん彼女の性格が丸くなっていくのは、もはやお約束と言って良いでしょう。
で、初登場刑事が二人いるので、いつものように決まった相棒がいるわけではなくなり、自然とフロストと行動を共にするキャラが増え、レギュラー陣の個性がいつも以上に書き込まれることになります。本書の魅力の一つはこれでしょうね。特に終盤のあのキャラの行動は大いに泣かせます。今作の目玉。くそぉあざといなウィングフィールドさん(だがそれがいい)。

ところでモジュラー型を突き詰めた結果、フロスト警部シリーズは話にメリハリが欠けてしまうというある種の欠点らしきものがあるのもまた事実。そんなに欠点だとは思いませんが、今作はさすがに長かったかもしれませんね。特に下巻は新たな事件がこれといって発生しなく、上巻の捜査の続きばかりなので、少し中だるみしているように思えます(とは言え一気読みしてしまうのがすごいところなんですが)。
ちなみに解説でフロストが丸くなったようだとあって、人情味の強調もその一つかなと思うのですが、これってもしかしてドラマの影響なんじゃないでしょうか。そういやフロスト役のデイヴィッド・ジェイソンを使った楽屋ネタなんかもありました(と思ったのですが、Wikipediaによると作品がドラマに影響されないよう見ないようにしていたとか。うぅむ)。

というわけで、本書も素晴らしかったです。フロスト警部シリーズは、これぞ英国警察小説の面白みだぜ!って要素が満載で、芹澤さんの訳文がまた異様に読みやすいので、あんまり海外物読まないんだよなぁって人にこそオススメしたいシリーズです。イギリスでは深夜に中華料理の出前を頼むのかとか、持ち帰りのフィッシュアンドチップス美味そうとか、下層階級やら上流階級やらとか、上流階級がやたらと葉巻吸ってたりとか、しょうもない下品なジョークとか、まぁとにかくイギリスっぽいイメージ満載です(非常に勝手なイメージ)。唯一足りないのはパブくらいじゃなかろうか……。とにかく未読の方はこの機会にぜひぜひ。初めて読むのなら『フロスト日和』がオススメです。

しかしこれより長い『冬のフロスト』とはいったい……やはりビル・ウェルズ部長刑事のクリスマス出勤に関するグチから始まるんでしょうか。

書 名:フロスト気質(1995)
著 者:R・D・ウィングフィールド
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mウ-8-4,5
出版年:上巻 2008.7.31 初版
    下巻 2008.7.31 初版
      2008.8.22 2版

評価★★★★★
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