コリーニ事件
『コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ(東京創元社)

2001年5月、ベルリン。67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、新米弁護士のライネンは気軽に国選弁護人を買ってでてしまう。だが、コリーニはどうしても殺害動機を話そうとしない。さらにライネンは被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り……。公職と私情の狭間で苦悩するライネンと、被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士マッティンガーが、法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。コリーニを凶行に駆りたてた秘めた想い。そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。刑事事件専門の著名な弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く、圧巻の法廷劇。(本書あらすじより)

シーラッハの初長編です。ちなみに7月の千葉読書会の課題本でもあります。というわけで来月にはまた再読するはず。
何がすごいって、シーラッハの短編がそのまんま長編(中編)になっていることだと思うのですよ。淡々と過去が、暴力が、裁判が、シーラッハ文体によって描かれていきます。ドイツ的社会小説ではあるんだけど、日本人が読んでも何の問題もない作品でしょう。佳作、という感じ。

一応法廷サスペンスっぽい体裁ですが、はっきり言って法廷物とは言い難いです。法曹界の内情と、ドイツの過去こそがこの話のメイン。シーラッハが問いかけるテーマは重く、ラストに作者は1つの大きな疑問を投げかけます。
……と、ついついストーリーやメッセージ性を語ってしまうんですが、ぶっちゃけこの作品が読ませるのは話がどうこうってより「シーラッハ文体」だからなんですよね。淡々とした、非常に静かな筆致で紡ぎだされる文章を堪能できれば、それで自分は十分満足。『犯罪』『罪悪』ファンが読めばそれで良いんじゃないかと。
というのも、『コリーニ事件』は必ずしも完璧な作品ではないんですよ。コリーニが黙秘した理由はよく分からないし、主人公の生い立ちが後半イマイチ物語に絡みきれていないし、さらにはこの中編ぐらいの分量は実にコスパがわr……じゃなくて、何とも中途半端な長さに思えてしまうし。
言ってみれば、50ページくらいでも充分な話ではあるんです。別にダラダラしているわけではなく、一気読みさせはするんですが、シーラッハの「長編」とは何なのか、という疑問をちょっとだけ感じます。これは、いくつか彼の作品を読まないと分からないんでしょうねぇ。

というわけで、良い作品ではあるんですが、大いに褒めちぎりたい、というのとはちょっと違うかな、という印象です。『犯罪』『罪悪』と比べると、『コリーニ事件』はテーマこそ重いのにどうしても地味すぎる印象を受けるのは何とも不思議。本質的に長編作家ではないのかもしれませんね。

書 名:コリーニ事件(2011)
著 者:フェルディナント・フォン・シーラッハ
出版社:東京創元社
出版年:2013.4.15 初版

評価★★★★☆
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