容疑者Xの献身
『容疑者Xの献身』東野圭吾(文春文庫)

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。(本書あらすじより)

長らく積んでいた本で、その間に母親も弟も読んでいたのですが、とにかくいまさら『容疑者Xの献身』です。読む理由はもちろん、『喪失』と比べてどちらの方が面白いか調べるため(笑)

まず、コロンボ以外で、しかも小説でここまで倒叙らしい倒叙を読むことはほとんどなかったので、いろいろ新鮮でした。400ページという程よい分量に過不足なくまとまった良作だと思います。ただ、世間でやたらと持てはやされている理由は正直よく分からないんですよね。一点、ちょっとだけ気に入らないところがあるので。

倒叙物が難しいのは、スタートとゴールが定まっているため、話を長く引っ張りにくいことだと思います。導入・捜査・対決・解決のバランス感覚が優れていないと、長編として辛いものになりやすいのではないでしょうか(という気がする)。『容疑者X』はお手本のごとくそれが上手いのです。実に無駄なく読ませる作品でしょう。
犯人が仕掛けたトリックは、某先輩は見抜けない方がおかしいとか何とかほざいていたのですけど、自分は全然分かりませんでした。これまたお手本のようなトリックですが、シンプルに決まっていてかなり良いんじゃないかと。単なるトリックに留まらず、動機面としっかり結び付いているのが上手いです。

一点どうしても気に入らないのが、最後に探偵ガリレオが取る行動。何でこいつ正義感は関係ないとか言いながら全てを台なしにしようとするのかなぁと。誰得なんですかちょっと。結果的にすんげぇ悲壮感漂う話になったのは全部こいつのせいじゃないですか、ぶっちゃけた話。なぁんかこのせいで素直に感動出来ないんですよね。よく考えたらトリックもかなりどうかと思うし。

ちなみに某作を読んだ後に自分の中での整理がついたのですが、『容疑者Xの献身』のトリックがそこまで気にならないのは、あくまでこう、(ネタバレなしにどう言やいいんだ)、場外ホームランじゃなくて、天井に当たるレベルだからなんですよね、たぶん。という個人メモ。

『容疑者Xの献身』と『喪失』、どちらが面白いかと聞かれても、何かもう根本的に別物だという気がするので、よく分からないというのが正直なところですね。強いて言うなら、感心したのは『容疑者Xの献身』、けどMWA長編賞を取るには薄味過ぎるので『喪失』の方が受賞しそう、だけどぶっちゃけ『喪失』はちょっと物足りない、といったところでしょうか。うぅん。

書 名:容疑者Xの献身(2003~2005)
著 者:東野圭吾
出版社:文藝春秋
    文春文庫 ひ-13-7
出版年:2008.8.10 1刷
    2008.11.25 10刷

評価★★★★☆
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