喪失
『喪失』モー・ヘイダー(ハヤカワポケミス)

当初は単純な窃盗と思われたカージャック事件。だが強奪された車の後部座席に乗っていたはずの少女はいっこうに発見されない。捜査の指揮を執るキャフェリー警部の胸中に不安の雲が湧きだしたとき、今回とよく似た手口の事件が過去にも発生していたことが判明した。犯人の狙いは車ではなく、少女だったのか! 事件の様相は一変し、捜査に総力が注がれる。だが姿なき犯人は、焦燥にかられる警察に、そして被害者の家族に、次々と卑劣きわまる挑発を……屈指の実力派が、MWA賞最優秀長篇賞の栄誉を射止めた力作(本書あらすじより)

『容疑者Xの献身』を破ってMWA賞に輝いたということで話題になったようなならなかったような。なりませんでしたね。『容疑者Xの献身』が受賞しなかったらもうMWA賞にゃメディアは興味ないということでしょうか。
『容疑者Xの献身』も例によって積んでいたので、『喪失』に続けて読みました。感想はまたアップします。

さて、しばらく翻訳のなかったモー・ヘイダー。めちゃくちゃイヤな作品を書くという評判でしたが、『喪失』ではかなり丸くなったというのが巷のウワサです。ふーむ、まぁ確かにそんなにイヤなミステリではなかったかな。
読み終わったあとは、「おぉ、なかなかしっかりしたものを読んだ、面白かった」という感想だったのですよ。ところが数日経って思い返そうとすると、驚く程に何にも心の中に残っていないのです。非常によく出来た作品で、完成度は高く、読ませるし、満足の一冊ではあるんですが、何か物足りない気がします。

小女誘拐物ということで、扱っているテーマは重め。序盤はやや退屈ですが、事件について明らかになっていく中盤以降は読者をグイグイと引っ張っていくため、そこそこの厚さはほとんど気になりません。キャフェリー警部とその周辺の人間の背景もしっかり描かれています。ちょっと嫌味な言い方かもしれませんが、非常に優等生的な作品だと思います。
では何がいかんのかと言われると、特にケチのつけようがない作品だけに書くのが難しいのですが、例えばキャフェリー警部とフリー巡査部長に感情移入しにくいのはやや問題かもしれません(前作までを読んでいないからかもしれませんが)。キャフェリーはまぁぶっちゃけ平凡ですし、フリーは正直どういうキャラクターなのかよく分かりません。いろいろと背景に抱えているものがあるせいで、両主人公とも、読者とは少し距離を取ってしまっているように思います。
後半では事件について意外な真実が明らかになりますが、その見せ方もやや難アリかなぁと。また、終盤の展開が良くも悪くも大人しく片付いてしまうせいで、ベタというか、ありきたりの域を出ていない印象を与えてしまっているようにも思うのです。骨太の警察小説ではあるんだけど、あくまで見本的過ぎる印象に強く、これといって突出した要素を感じられませんでした。

とは言え、『喪失』が面白いのに間違いはないでしょうね。かなり書けている作品だけに、もう一歩期待してしまう、ということでしょうか。
なんでこんな感想になったのか考えると、たぶん似たような作品である『六人目の少女』を先に読んでしまったせいじゃないかな、と。あちらは、ほら、あんまり優等生的じゃないので……(ヘンですからね)。

書 名:喪失(2010)
著 者:モー・ヘイダー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1866
出版年:2012.12.15 1刷

評価★★★☆☆
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