黒衣の花嫁
『黒衣の花嫁』コーネル・ウールリッチ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

ジュリーと呼ばれた女は、見送りの友人にシカゴへ行くといいながら、途中で列車をおりてニューヨークに舞い戻った。そして、ホテルに着くと自分の持物からイニシャルをすべて消していった。ジュリーはこの世から姿を消し、新しい女が生まれたのだ……やがて、彼女はつぎつぎと五人の男の花嫁になった──結婚式も挙げぬうちに喪服に身を包む冷酷な殺人鬼、黒衣の花嫁に。巨匠ウールリッチの黒のシリーズ劈頭を飾る名作。(本書あらすじより)

うぉぉぉぉぉぉぉウールリッチすげぇ面白い!あんたは天才か!
『聖アンセルム923号室』『幻の女』しか読んでいなかった自分ですが、いずれも傑作でした。『黒衣の花嫁』もやはり傑作。代表作はいずれもきちんと傑作。なんと素晴らしい作家なんですか。

なんてったってまず話がべらぼうに面白いのです。謎の女(めちゃくちゃ魅力的なヒロイン)に、一見無関係に思われる男たちが次々と殺されていくという展開がもうひたっすら楽しいし、それを必死で追う刑事もいいし、とにかくべらぼうにカッコイイ小説。毎章毎章が必要最小限の言葉でキッチリまとまり、終わっていくのが素晴らしく良いんですよねぇ。天性の才能を感じます。読者を飽きさせまいと、毎回変化をしっかりと加えているのにも好感が持てるところ。そして第4部で、なかなか面白い繋がりが出てくるとともに、サスペンス感が一気に強まるわけですよ、激アツじゃないですか。
何よりもヒロインである「花嫁」が魅力の塊のような人で、殺人犯である彼女を読者は応援せざるを得ません。復讐の方法がまたいちいちカッコイイんですよ。これは(映画化されちゃいましたが)絶対に映像化出来ない作品のような気がします。三次元で見たら、とたんに魅力が薄れてしまうような。

しかし解説にあるとおり、決して欠点のない作品ではありません(『幻の女』も読み終わったあとこんな気分になった記憶が)。正直、最後の展開はちょっと気に入らないのですが、これはもしかしたら彼女に感情移入しすぎたせいでしょうか。刑事がここまでこの事件に執着する理由が別にないというのもやや問題かもしれません。ウールリッチはラストの説明がいちいち長いのか、『幻の女』と同様、必要な説明ではあるにもかかわらず、最後に蛇足っぽさをどうしても感じてしまいます。
でもま、これだけ面白けりゃ最後どうなろうがどうでもいいというか、ラストがちょっとアレでも気にしない、というのが本音です。ウールリッチファンを自称する人は、きっとこういう欠点も含めて愛おしくなるんでしょうね。

というわけで、ウールリッチすげぇぇな、と思わせられる一冊でした。まだまだ未読の長編だらけですし、短編集なんかも面白そうなので、じっくり読み進めていきたいところです。

書 名:黒衣の花嫁(1940)
著 者:コーネル・ウールリッチ
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 10-4
出版年:1983.8.15 初版
    1989.12.31 4刷

評価★★★★★
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