ガストン・ルルーの恐怖夜話
『ガストン・ルルーの恐怖夜話』ガストン・ルルー(創元推理文庫)

フランス・ミステリ界を代表する巨匠が贈る、世にも怪奇な物語集。片腕の老船長が語る奇怪な話「胸像たちの晩餐」、コルシカの復讐譚に材をとった「ビロードの首飾りの女」、結婚相手が次々と怪死を遂げる娘の物語「ノトランプ」など、いずれ劣らずなまなましく人間心理の闇を描いて、読む者を戦慄の世界へ誘う。恐怖ファン必読!(本書あらすじより)

恐怖ファン必読!と言われても自分は恐怖ファンじゃないので何とも言えないのですけど、とにかくサークルの先輩のおすすめにより読んでみた次第です。ホラー短編というより、奇譚、もしくは怪奇譚という感じ。全体的に淡白に仕上げられています。都会的な健康さを持つ話もあれば、非文明的な世界の話もあったりと様々。
ただ、総じてちと印象に残りにくいんですよねぇ。おそらく読んだら絶対忘れないであろう「胸像たちの晩餐」は、確かに一歩抜きん出ているように思います(これは奇譚)。それ以外では、ミステリとして良く出来ており面白い「ノトランプ」、妙にユーモラスな「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」が良かったかな。

……けどやっぱり、そのサークルの某先輩がやたらと興奮していたのは何ともよく分かりません。こういう合理的な解決のつく恐怖譚というのが、三津田信三には受けるらしいです。うーん。あとこの本はホラーファンの中でもかなりの人気のようで、まぁやっぱり自分にはちと分かんねぇな、というのが正直なところですね、えぇ。

ちなみに収録されている短編がどうもまとまりがないので、書誌情報を調べてみたのですが、何だか錯綜していてよく分かりません(分かりませんばっかり)。1920年代に発表された短編を1つにまとめた……ってことでいいのでしょうか。原題となっている『Histoires Epouvantables』が1977年にフランスで出版されているけど、こちらは6編しか収録されていませんし(ような気がする)。明らかに付け足し臭い、後ろの2編が、やっぱり付け足しなんじゃないかな、ってとこでしょうか。どのみちルルーによりまとめられた短編集ではないということですね。

以下個別の感想です。


「金の斧」
わりとありふれた話ではあるのですが、語り口がいかにも怪談調のせいか、面白く読めます。この手の話をエリンも扱っていましたが、あちらは真逆なわけで、なかなか興味深いですね(ネタバレになるのでどの話かは言えない)。

「胸像たちの晩餐」
読んでいる間、だんだんとタイトルの意味が分かって来る作品。ストーリーそのものより、話の進行上明らかに不要な四人の船乗りの方が不気味に感じられるのはなぜなのでしょうか。女主人の存在がまた絶妙。しかしよくあるテーマではあるのですが、ちゃんと動機付けがなされているのは上手いですね。

「ビロードの首飾りの女」(1924)
この人の「恐怖夜話」って、超自然的なことが起こったように見せかけながら最終的にかなり合理的な結論を出すもの、を言うのでしょうか。面白いです。でもまぁ、20数ページにまとめた方がいい気がしますね、ちと長いです。

「ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス」(1924)
おいオチぃ!!!「恐い話」の意味がなんか変わってきてる気がするぞ大丈夫ですかこの短編集(やっぱりまとまりに欠ける)。話を聞いている船乗りたちの発言がいちいち差し込まれるなど、この短編はちょっと意図的にユーモア成分が多いようです。

「ノトランプ」(1924)
怪奇というより、非常にミステリらしい短編。何しろ意外な犯人までいるわけだし。この手の話は長さを気にせず読めるからいいですね。なおかつ、語り手が渦中の人間なので臨場感があります。良作。

「恐怖の館」(1925)
紛れも無く恐怖話。茶々がほとんど入らないことからも、作者が真面目に恐怖話をやってることが分かります。何よりシチュエーションが不気味過ぎですね(死んでもこんな宿泊まりたくない)。捻りもきいていて、なかなか良く出来ている作品です。

「火の文字」
本短編集で、初めて、非合理的な話が登場。悪魔とかそういうやつ。ただ、これだけ短い話で、エピローグをわざわざ分けた理由が分かりません。話自体は普通でしょうか。語り手(ルルー)が体験した話、として書かれているのはこれだけです。

「蝋人形館」
この話だけ、明らかに三人称視点が強く意識されています。話自体は割合ありふれていて……というかありきたり。意外性もほぼなし。最後に持ってくるにはちと弱いかなぁ。

書 名:ガストン・ルルーの恐怖夜話(1977?)
著 者:ガストン・ルルー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 530-1
出版年:1983.10.21 初版
    1990.11.9 15版

評価★★★☆☆
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