厭な物語
『厭な物語』アガサ・クリスティー他(文春文庫)

誰にも好かれ、真っ当に生きている自分をさしおいて彼と結婚するなんて。クレアは村の富豪の心を射止めた美女ヴィヴィアンを憎悪していた。だがある日ヴィヴィアンの不貞の証拠が……。巨匠クリスティーが女性の闇を抉る「崖っぷち」他、人間の心の恐ろしさを描いて読む者をひきつける世界の名作を厳選したアンソロジー。夢も希望もなく、救いも光明もない11の物語。(本書あらすじより)

とあらすじにあったら、さぞかし厭な話ばっかりで気が滅入る(のを楽しむ)んだろうなぁと思うじゃないですか。
えー、今回分かったことですが、「厭」と分かって読む「厭な物語」は、はっきり言ってそんなに「厭」と感じないのでした。油断しているところに襲ってくるから「厭」に思う、ってことですね、そりゃそうだ。
そういうわけなので、はっきり言って自分はイヤミスなんて好きでも何でもないのですが、このアンソロジーに関してはそこまでうぇぇぇぇぇとなることなく読み終えられました。しかしそうなると逆に物足りないなぁと思ってしまうのもまた事実(いや嫌いなんだよ、本当だよ)。良アンソロジーだとは思うのですが、「厭」さを求めて読まない方がひょっとするといいのかもしれません(そもそも同趣向の短編ばかり集めたものって、読んでいて飽きないんですか、皆さん)。
なお、構成についてはなかなか面白いことをやっています。いいぞもっとやれ。

心臓が弱くイヤミスにビビる人間として、ベストにローレンス・ブロック「言えないわけ」を(情けない)。一番長いのに一番早く読めたような。次点にフラナリー・オコナー「善人はそういない」……いやこっちがベストかも。その次がウラジミール・ソローキン「シーズンの始まり」で。
何人かの作者については、ちゃんと短編集を読みたいな、と思わせられました。そういう点では、入門書として実に最適な一冊です。何しろシャーリイ・ジャクスン『くじ』すら未読でしたからね、あはは(笑えない)。

以下、個別の感想を超簡潔に。ちなみに既読作は「崖っぷち」「フェリシテ」「うしろをみるな」の3作のみです。


「崖っぷち」アガサ・クリスティー(1927)
あっ、この感じは懐かしい。結末の付け方がいかにもクリスティー短編らしいですね。

「すっぽん」パトリシア・ハイスミス(1970)
誰かの何かの話を思い出しそうなんだけど、思い出せません……。まぁ実に厭な話(そりゃそうだ)。

「フェリシテ」モーリス・ルヴェル
そんなに厭な話じゃないけど、やっぱり「厭」だからこれにしたんでしょうか。田中早苗訳は何回読んでも名文ですねぇ。美しい。しとしと雨の降るパリがぴったり来ます。また『夜鳥』読んでみようかな。

「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」ジョー・R・ランズデール(1988)
不条理な暴力に満ちた厭な話。タイトルはカタカナに置き換えただけかと思ったらちょっと違いましたね。こういう単純に厭なのが一番苦手です。

「くじ」シャーリイ・ジャクスン(1948)
ぐぇぇぇ厭な話だ。異色作家短篇集臭がプンプンするぅ。

「シーズンの始まり」ウラジーミル・ソローキン
ロォォォォッッッッシア!!!(偏見) 読み終わった後のタイトルが一番厭に感じます。これは良作。

「判決 ある物語」フランツ・カフカ(1912)
…………????????

「赤」リチャード・クリスチャン・マシスン(1988)
「厭」ってのとはちょっと違うねぇ。こういう短い作品、嫌いじゃないです。しかしこのアンソロジー、「赤」を「ナイト・オブ・ザ・ホラー・ショウ」の後に読ませるんだぜ……すごい構成だ……。

「言えないわけ」ローレンス・ブロック(1998)
これ、「厭な物語」というより何か普通の短編じゃないですか(致命的なボキャ貧)。ぶっちゃけこういうのの方が好きなんだぁとつくづく思いました。

「善人はそういない」フラナリー・オコナリー(1953)
こういうスタイリッシュなユーモアは大好きなのです。

「うしろをみるな」フレドリック・ブラウン
前回読んだ時は居間で読んでしまったので、今回は確実にうしろを取られることのないお風呂の中で読みました(ドヤ顔)

書 名:厭な物語(1912~1998)
著 者:アガサ・クリスティー他
出版社:文藝春秋
    文春文庫 ク-17-1
出版年:2013.2.10 1刷

評価★★★☆☆
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