ポップ1280
『ポップ1280』ジム・トンプスン(扶桑社ミステリー文庫)

ポッツヴィル、人口1280。この田舎町の保安官ニックには、心配事が多すぎる。考えに考えた結果、自分にはどうすればいいか皆目見当がつかない、という結論を得た。口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の愛人、昔の婚約者、保安官選挙……だが、目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。思いきった手を打って、今の地位を安泰なものにしなければならない―饒舌な語りと黒い哄笑、突如爆発する暴力!人間の底知れぬ闇をえぐり、読者を彼岸へとみちびく、究極のノワール。(本書あらすじより)

第4回千葉読書会の課題本でした。
『内なる殺人者』よりははるかに面白く、また興味深い一冊であると言えるでしょうね。内容的には『内なる殺人者』と被る点が非常に多いのですが、12年間を経ていることもあり、そのアプローチの仕方は大きく異なります。いずれにせよ、ノワール史上に残る傑作でしょう。

読んで思ったのが、『内なる殺人者』と同じ感想でアレですが、やはりそんなに“黒く”ない、ということでしょうね。主人公ニックの語り口は、同じ保安官でも『内なる殺人者』のルーと比べてさらに軽いものとなっています。あらすじからしてそうですが、ニックは一見間抜けっぽいのです。保安官であるとは言え、町の人からそこまで優秀とみなされているわけではありません。
ところが軽々しい冗談交じりの口調で語られる内容は、彼がいかに酷いやり方で町の治安を(自分に都合よく)守っているか、ということなわけで。ニックは色々と正当化していますが、結局のところ自分勝手に過ぎない、というのはなかなか面白いですね。彼は自分の面倒な妻やら愛人やら町のゴロツキやらをうまいこと片付けていくわけです。

『ポップ1280』の魅力は、やはりこの軽妙な語り口です。「ノワール」ということで身構えて手に取った方はおそらくビックリするはず。『内なる殺人者』は計画の上手くいかない不安感・主人公の狂気じみた語り口による不安定さがありましたが、それすらありません。ニックは実にうまいこと自分の計画を実行していくのです。やってることはそこそこ酷いのですが、チャラチャラ書かれるせいか重くはなく、むしろニックを応援してしまうような読者すらいるかもしれません。
もちろん、ジム・トンプスンは「ノワール」「暗黒小説」を書こうと思って作品を書いたわけではないのですから、現代の基準から言って軽めに感じるのも当然です。こうしたレッテルはあくまで後世の人が後付けで貼り付けたに過ぎないわけです。というわけで、「ノワール」という単語にビビってなかなか手を出せない人は、ぜひジム・トンプスンを読んでみることをおすすめします(と、ノワール読んでいない自分が大して読んでいないトンプスンをすすめるのもどうかと思うのですが)。

全体的に上手くまとまっていることもあり、おすすめ出来る一冊だと思います。たまには本格ミステリじゃないのも読んでみませんと、ねぇ?(自戒を込めて)

書 名:ポップ1280(1964)
著 者:ジム・トンプスン
出版社:扶桑社
    扶桑社ミステリー 1042
出版年:2006.5.30 1刷

評価★★★★☆
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