メグレ夫人と公園の女
『メグレ夫人と公園の女』ジョルジュ・シムノン(メグレ警視シリーズ)

事件の発端は匿名の投書だった――《テュレンヌ街の製本屋が暖炉で死体を焼いていた。》家宅捜査に赴いた刑事は暖炉の灰から人間の歯を見つける。直ちに製本屋は逮捕されるが、彼は犯行を否認する。一方メグレ夫人は歯医者に通っていて、時間待ちをする公園のベンチで子供づれの女性と知合う。彼女は夫人に子供をあずけ、歯医者の順番をふいにさせた上、引取りにきたときには逃げるように立去った。ところがこの女性と、事件に一役演じた女性とが同一人物らしいとわかったのだ。女性がかぶっていた帽子から、メグレ夫人は彼女の身元を割出す手掛りをつかんで来る……。(本書あらすじより)

シムノンは、短編を除くと……えぇと、読むのは6年ぶりかなぁ。『男の首 黄色い犬』を読んで、何が面白いのかさっぱり分からなく、そのままシムノンはほったらかし。しかしそれも当たり前で、端正な本格ミステリを探し求めていた当時の自分がシムノンの面白さが分かるわけがないというか(いや今ならこの渋さが分かるというわけではないですが)。
今年はフランスミステリをなるべく読もうと思っているので、シムノンにも久々に挑まねばならず、というわけでなぜか買っていたコレを引っ張り出してきました。いくつか並んでいた河出書房新社のメグレ警視シリーズのうち、なぜこれを選んだのかというと……たぶんタイトルが面白そうと思ったからじゃないかと。


話はあらすじのとおり。警官や容疑者が入り乱れながら、淡々と捜査が描かれていきます。意外性などはほとんどなく、人々がしかるべく動き回りしかるべく捜査していった結果、しかるべき事実が明らかになった、というようなもの。故にカタルシスとかそんなものは(もちろん)なく、あるのは人間ドラマなのです。
犯人の行動が次第に明らかになっていく様はなかなか上手いと思いますが、別にそこが読みどころなのではないんですよね。事件なんて自白と「その後~」で片がついちゃいます。あくまでフランス人の生き方がメイン。だからこそ、あんな洒落たラストの文を持ってこられるわけです。いやぁ、なかなかかっこいいですね。

人間ドラマであるため、登場人物の描かれ方はとても細やかで好感が持てるものです。本書の肝は24歳新人刑事であるラポワントでしょう。彼は要所要所で重要な役割を果たし、自分のあり方に悩みながらメグレを慕い、捜査に関わっていくことになります。この作品は、彼の成長物語なのです。この部分がかなり面白く、作者は一作ごとに様々な要素を入れようとしているんだろうなと感じました。
そして主役のメグレ警視、感情を表に出さないけど、どうもそれは意図的にキャラとしてやっているようですね。感情的な面を表に出すべきではない、と考えているのでしょうか。だから奥さんが一人で探偵ごっこをして重要な証拠を見つけても、その場で喜んだり褒めたりしないんです(それってどうなの)。その代わり、数日後に一緒にディナーに行き、映画を見る。何それフランス人かよおっしゃれー。

まぁそんなわけで、グイグイ読ませるとか謎がどうこうとかプロットが何とかそういう話じゃないし、フランス人の名前がどうにも覚えにくくてアレだし、製本屋がいまいち何をしたいのかよく分からないとかツッコミどころもあるのですが、それでも十分楽しめました。シムノン面白いですね。ちょこちょこ読むのに最適かも。
『男の首 黄色い犬』よりもはるかに読めましたが、あくまで当時の感想なので、今読むと分かりませんねぇ。こういう渋さが分からなかったのかも。いつかまた読み直す必要があります。

書 名:メグレ夫人と公園の女(1950)
著 者:ジョルジュ・シムノン
出版社:河出書房新社
    メグレ警視シリーズ 12
出版年:1983.1.25 初版

評価★★★★☆
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