六死人
『六死人』S=A・ステーマン(創元推理文庫)

五年前、大金持ちになる夢を胸に世界じゅうに飛び立った六人の青年たち。そしていま彼らは再会のため、それぞれが帰国の途に着いていた。だが、そのうちの一人が客船から海に落ちて行方不明になってしまう!やがて、一人、また一人と、何者かに次々と殺されてゆく……。(本書あらすじ、一部カット)

出来れば、読む前にはあらすじを見ないほうが良いと思います。ちょっとネタバレ気味ですね。

さて、フランスの作家の中でも特に本格よりということで、日本では割と人気のあるステーマン、初読です。
ストーリーは面白いし、アイデアも(古いとか元祖とか関係なく)悪くはない……のですけど、あくまでそのアイデアのみで小説を作ってしまったのが惜しい作品です。もっとこう、一人の女を巡るドロドロをねちっこく書くとか、嵐の薄暗さを気味悪く演出するとかすべきだったのではないかな、と。

トリックについては、こりゃあもうさすがに現代人なら分かってしまうだろうし、真新しさはほとんどないのですが、「六死人」という設定の奇妙さが良く、六人が最初から集まっているのではなく徐々にそろっていくことでサスペンス感を盛り上げているため、十分楽しむことは出来ると思います。この点についてはそんなに不満はないのです。
問題は、サスペンス感がかなり足りないことです。だって今にも次の誰かが殺されそうなんですよ、もっとみんな焦ろうよ、緊迫感出そうよ、そんな謎解きとかがおっぱじまる黄金時代な空気とかいらないよ、雰囲気が壊れちゃうじゃん、もったいない……とずーっと思ってしまいました(特に3、4人目ですね、終盤はさすがに作者も頑張っていたのですが)。
加えて、せっかくおフランスらしく(ステーマンはベルギー人ですけど気にしない)一人の女を巡る男同士の対立っていう要素を入れたんですから、そこをもっと掘り下げるべきじゃないですか。「そうか、お前も彼女のことが好きなのか」でほとんど終わっちゃって、このエピソードの無駄遣い感が半端ないです。まぁこれのお陰で、展開的にはちょっとだけ読者を驚かせてはいるんですが、やはりもったいない。

思うにステーマンは、フランス語圏作家の中では、お家芸とも言える心理描写が例外的に上手くない作家さんだったんじゃないでしょうか。英米作家を見習い本格っぷりを強めたのも、逆に言うとそっちでしか勝負出来なかったからなのでは。いや他の作品読んでいないので適当ほざいているのですけど。『マネキン人形殺害事件』と『殺人者は21番地に住む』は買ってあるので、いずれ読んでまた考えたいと思います。

っというわけで、これがもし別のフランス語圏作家に調理されていたら、もっとクオリティの高い読ませる作品になったんじゃないかなぁ、などという妄想をついついしてしまうような作品なのでした。ネタが良いだけに、もったいないですね。

書 名:六死人(1931)
著 者:S=A・ステーマン
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mス-4-2
出版年:1984.8.24 初版
    2007.9.14 2版

評価★★★☆☆
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