やとわれインターン
『やとわれインターン』ローレンス・オリオール(ハヤカワポケミス)

大病院の大物医師ブラサールは、ある若い女と浮気を続けるために、とある考えの実行を彼女に強いられる。貧乏だがとびっきり美男子のインターン見習いドゥボスを、彼の家に住まわせることにしたのだ。大物医師の美人の妻を交え、四人の奇妙な関係が始まり、やがて悲劇へと至ることに……。1966年度フランス推理小説大賞受賞作。(あらすじ作成)

買いに買いまくり積みに積みまくっているフランスミステリをそろそろ崩さにゃいかんのです。というわけでまずはこれを。オリオールの作品はポケミスから2冊、角川文庫から1冊(ローランス・オリオールの名前で)出ていますが、どれもあらすじが面白そうなんですよね。ちなみにポケミスオリオール、『やとわれインターン』にしろ、『殺人が少女を大人にする』にしろ、タイトルが良いと思います。

冒頭で警察の捜査が示され、誰かが殺された、ということのみ読者に知らされます。こういう無意味なトリッキーさはフランス作家お手の物という感じですね。そしてその殺人までの過程が、四人の心情をドロドロドロドロ交えながらドロドロドロドロ描かれていくのです。謎の提示が控えめながら効果的で、また心理描写がフランス作家らしく抜群に上手いので、かなり読ませるし、面白いです。
そう、殺人に至るまではめちゃくちゃ面白いのです。ただ、終盤の警察の捜査が、なんか妙に本格臭が生じてしまっているのが個人的にはややマイナスポイントかな。いや本格は大好きなんですけど、どうも作品の雰囲気にそぐわない気がするのです。ま、意外な被害者、犯人(は意外じゃないか)の演出が良く、サプライズ感は悪くはないんですが。
後半は(フランスらしく)「愛とは何か」みたいな話になっていきますが、これが地味ながらかなり上手いです。特に、ある人物の証言と、ある人物の行動により、ラスト、このテーマが強烈に読者に襲い掛かるよう出来ているところは素晴らしいですね。きちんと計算して作っているのでしょう、技巧的です。余韻が素晴らしく、苦い後味が美味。

解説に、医療界の裏を描いている点が近年話題の『白い巨塔』と似ているよね、って書いてあるのに時代を感じるんですが、なんかこう、翻訳ミステリが、当時の国内作家の人気作品と比較されているのって、違和感を覚えるというか、興味深いですね。

まーしかし、一定の面白さ・満足度はありますが、わざわざ絶版なのを探して読め、ってほどではないでしょうねぇ。フランスミステリの典型的な良作をもっと読みたい、という人が趣味で手に取れば十分かと。ただ、やっぱフランスミステリは面白いですね、これだけは言えます。解説で、近年のフランスから出た有望な新人は、ジャプリゾとモンテイエとオリオールだ、って言われてますけど、最終的にはジャプリゾとモンテイエに大きく負けた感がありますね。日本に紹介されていないだけかもしれませんが。

ところで解説のNさんって、長島良三氏なのかな。

書 名:やとわれインターン(1966)
著 者:ローレンス・オリオール
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1062
出版年:1969.1.15 1刷

評価★★★☆☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/899-77e16eac