されば愛しきコールガールよ
『されば愛しきコールガールよ』ロス・H・スペンサー(ハヤカワ・ミステリ文庫)

チャンス・パーデュー、それが俺の名前だ。私立探偵。スローガンは、何でも引き受けます。しかし、開店そうそうなかなか依頼人はないもんだ。あったにしても、ろくなもんじゃない。見かねてコールガールのベッツィが、事件の依頼人を紹介してくれた。それもやっぱりコールガールで、しかも相当セクシーだった。事件もそっちのけで、俺に迫ってくる……アメリカをほろぼそうとする秘密組織のボスを捜してくれという依頼が来たのも、そんな時だった!独創的なスタイルで描く、一読笑殺、驚天動地のナンセンス・ハードボイルド第一弾!(本書あらすじより)

独特な文体でハードボイルドをパロりまくった爆笑コメディ……でしょうか。読んでいるとだんだんこの文体に慣れてきて、ほんわかと楽しい世界に浸りきってしまい非常に面白かったです。終盤に漂うメタっぽいギャグとかニヤニヤが止まりません。いやぁこれは掘り出し物でした。

主人公のチャンスは、一見出来る風のすかした私立探偵ですが、その実見当違いの人を殴ってばかりのどうしようもない人(しかも本人に“ダメ探偵”としての自覚がない)。ただし女に異様にモテるようで、ベタ惚れのコールガールのおかげでヒモみたい生活を送っているようです。けしからん。
起きる事件も何だかよく分からないものばかりで、若い男をレイプしまくるババアとか、DADA(デストロイ・アメリカ×2)団とか、まぁなんか謎(普通の依頼もありますが)。そしてチャンスは、なぜか最終的になあなあで事件を解決してしまうのですね。くそっ、けしからん。毎章頭に置かれるアンダーウッド爺さんの警句がこれまた笑えるものだったり意味深だったりで楽しませてくれます。
この空気感、何かに似ているんですよねぇ。ジョイス・ポーターとレナード・ウイバーリーを何となく思い出しましたが、ちょっと違うかな。なんかこう、実に良いです。未読の方にはぜひ味わってもらいたいです。

とにかく、何だかよく分かりませんが、とっても面白かったです。クスッと笑えるほのぼの感とどこか淋しげな感じを保てているのが良いのかな。シリーズが5冊も訳されたのも納得。うん、これは絶版にしとくのはもったいない。
ちなみにこの表紙を描いてる桜井一さんって、ドーヴァーの文庫の表紙の人と同じですよね。他にHM文庫で何か描いてないのかなぁ。集めてみたいです。他に角川文庫でケンリックとか描いていますけど。

書 名:されば愛しきコールガールよ(1978)
著 者:ロス・H・スペンサー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 88-1
出版年:1983.7.15 1刷
    1984.5.31 2刷

評価★★★★☆
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