スチームオペラ
『スチームオペラ 蒸気都市探偵譚』芦辺拓(東京創元社)

毎朝配達される幻灯新聞が食卓に話題を提供し、港にはエーテル推進機を備えた空中船が着水・停泊。歯車仕掛けの蒸気辻馬車が街路を疾駆する――ここは蒸気を動力源とした偉大なる科学都市。進路に頭を悩ませる女学生エマ・ハートリーは、長旅から帰還した父を迎えに港への道を急いでいた。父が船長をつとめる空中船“極光号”の船内で不思議な少年・ユージンに遭遇したエマは、ひょんなことから彼と共に名探偵ムーリエに弟子入りし、都市で起きる奇妙な事件の調査に携わることになる。蒸気機関都市を舞台に贈る、少年少女の空想科学探偵譚。(本書あらすじより)

初・芦辺拓。なにこれめっちゃおもしれぇ!!
うちのサークルは、この本を『このミス』『本ミス』投票で1位に推したんですが、まぁ他にはそんな人はどこにもいなく、んじゃあ自分もいっちょ読んでみようかと手に取ってみたわけですよ。
蒸気だらけのドリームワールド、続発する不可能犯罪、ホームズもどきの名探偵、ガールミーツボーイ、徐々にあらわになっていく陰謀、アッと驚く意外な真相、SF設定ながらの本格ミステリ……などなど。そりゃもう面白いに決まってるじゃないですかー。とにっかく楽しいのです。ワクワクが止まりません。終盤の好き嫌いはともかく、読んでいて退屈しない世界を作り上げることに成功した佳作だと思います。これはいいねぇ。

先程「終盤の好き嫌いはともかく」と書きましたが、これはもう好みとしか言い様がないでしょうね。ネタバレになるので言いにくいのですが、ある種物語の楽しさを減じてしまいかねない真相ではあります。個人的には、割合早めに明かしていたことでもあるし、これはこれで良いんじゃないかな、と。
あと、ラストの某ネタについては蛇足という意見が多いようですが、確かにあれはなくても問題ないですねぇ。ぶっちゃけいらないでしょう(ちなみに初芦辺拓なのでアレはググらないと分からなかったです笑)。あの部分を何とかして、ほんでもって英訳してイギリスに紹介してみたらどうなるのかなぁというのが目下気になっていることです。結構反応良いんじゃないんでしょうか。

いくつか気になった点を。まず雑誌連載という形態上仕方のないことではあるのですが、やはり単行本にする際に、前章のあらすじを無くすとか、そのへんはスッキリさせて欲しかったです。これをちゃんとやっている作品とやっていない作品では、かなり読み心地が違うもんですよ(ちなみに雑誌連載のままポーンと単行本にまとめてしまったもうダメダメなパターンとして、なんだかやたらと世評の高い歴史小説、童門冬二『上杉鷹山』をあげたいです、個人的に)。
それと、もう少し日本語能力を磨いて欲しいなぁと。ほんとに。修飾語のかけ方がワケわからないとか、一文が長すぎて頭に意味が入って来ないとか(決して長いのが問題なのではなく、長い文章での主語の使い方とかがあんまり上手くないのです)、出来れば直して欲しいです。……と言ったら、そんなこと言ってると最近の国内ミステリ読めないぞ、と言われました。そ、そうですか。

まぁ、とにかく、とっても楽しめたので、総合的には非常に良かったですね。これを機に、スチームパンク小説を、いやこの作品ははっきり言ってそうじゃないのですが、読んでみたいですね。最近のハヤカワSFシリーズから出ているやつとか。

書 名:スチームオペラ 蒸気都市探偵譚(2010~2012)
著 者:芦辺拓
出版社:東京創元社
出版年:2012.9.25 初版

評価★★★★☆
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