ハニー誘拐事件を追う
『ハニー誘拐事件を追う』G・G・フィックリング(ポケミス)

全男性の夢の恋人――女性には羨望のまなざしを浴びる美貌の私立探偵ハニー・ウェスト!巨大な乳房とヒップをなびかせ、いったんことあれば、ジュードーの極意で相手をなぎ倒し、マイク・ハマーのような拳銃さばきをみせるハニー再び登場!誘拐事件を追って暗黒街に挑戦する女探偵ハニー・ウェスト・シリーズ第3弾。(本書あらすじより)

いきなりゲスいミステリです(笑)
女探偵ハニー・ウェストシリーズで有名なフィックリングは、夫婦の共作ペンネームなんですよね。こういうお色気物を夫婦で、つまり女性が書いている、というのはちょっと珍しいというか、面白いなぁと思います。ハニー・ウェストがかなりしっかりした女探偵であるのは、やはりその影響なのでしょうか。
さて、この読んであらすじの如しお色気ハードボイルドシリーズ、初めて読んでみましたが、ただの色物ではありませんでした。ミステリ的意外性と、お色気アクション冒険が合わさった、非常に楽しいエンタメミステリ。こりゃ面白いです。

深夜、事務所にいたハニーは、突然ピストルを突き付けられ、海兵隊員の服を着せられる。おまけにつれていかれた先では銃撃戦に巻き込まれてしまう。命からがら逃れたハニーは、自分とそっくりの容姿の女性がいることを知る。ハニーがショットガンから逃げ回っていたのと同時刻、はるか遠くの病院で、そっくりさんは生まれたばかりの大富豪の赤ちゃんを誘拐していた。しかもその病院では同じ頃、(全く関係ない)赤ちゃんを生んだばかりの母親が殺害されていたのだ。ハニーは赤ちゃんを取り戻すべく南へ向かうが……。

と、この意味不明のへったくそなあらすじから分かる通り、事件が非常に込み入っています。さらにはそのそっくりさんを殺そうとする謎の集団やら、妻を殺された旦那やら、大富豪に恨みを持つカジノのオーナー(だっけ?)やらが入り乱れ、ぐっちゃぐちゃ。
話は基本的に、ハニーと妻を殺された旦那の二人による誘拐犯人追跡がメインとなっています。追っかけながら、この込み入った事件の手がかりがだんだんと集まって来るのですね。事件の中心はどうもそっくりさんにあるようなのですが……。ドタバタ追跡劇ながら、案外情報の出し方が上手く、ハードボイルドながらきっちり謎解きをしている感じです。
この誘拐事件の謎を解いたハニーは、探偵らしく、徐々に事件の全貌を説明していくのです。これがまたゆっくりなんですが、そうでもしないと読者の理解が追いつかないくらい込み入っているんですよ。伏線的にはともかく、かなり意外な真相が最後に示されます。そっくりさんや二人の赤ちゃんが結構綺麗に使われ、まぁそりゃ期待値が低かったからというのもありますが、感心してしまいました。

もちろん、お色気を忘れてはいけません(笑)。ハニーは冒頭で脱がされ、シャワーを浴びて石鹸まみれのとこを襲われ、小屋の中で男に押し倒され、裸と変わらないようなローカットドレスを着てあげくプールに落ちたりしながら、ドンパチやります。これでもか、と言わんばかりのサービスシーンですが、さすがに1950年代モラルというか、あっさり目っちゃあっさり目で、エロいというよりは、単なるドタバタかな。バトルシーンは案外多かったように思います。

やや中盤の追跡劇がだれますが、基本的にアクションとユーモアで読者を引っ張っていくので十分読める作品です。娯楽小説に求める要素がテンコ盛り。こりゃあ当時(1958年)売れまくるわけですねぇ。今読むとやや古臭いし、男性優位な社会観が出てしまってはいますが、ちゃんと面白いですよ。
ちなみにハニー・ウェストはカーター・ブラウンのメイヴィス・セドリッツと並んで語られることが多いみたいですが、頭が空っぽでお色気しか武器に出来ないセドリッツと比べ、ハニーはちゃんとした優秀な探偵です。まぁフェミニストから見ればどっちも全否定なんだろうなぁ。

書 名:ハニー誘拐事件を追う(1958)
著 者:G・G・フィックリング
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 930
出版年:1966.3.31 1刷

評価★★★★☆
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