沈黙のセールスマン
『沈黙のセールスマン』マイクル・Z・リューイン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

半年も入院したまま、面会謝絶で安否もわからない弟の様子を調べて。依頼人の女性は憔悴しきっていた。製薬会社でセールスマンとして働く弟が、会社の研究所で爆発事故にあい、以来、社の管理下にあるという。なぜセールス部門の者が研究所内の事故に?不審に思ったわたしは、ガードの堅い会社側に揺さぶりをかける――十数年ぶりに再会した実の娘とともに謎を追う知性派探偵サムスン。シリーズの人気を決定づけた傑作。(本書あらすじより)

なんてこった、傑作じゃないですか。
今年は毎月一冊、ハードボイルドを読んで来たわけですが、『沈黙のセールスマン』は『マルタの鷹』や『長いお別れ』や『ウィチャリー家の女』よりもはるかに楽しめました。というか性にあいました。超面白かったです。しかし今挙げた作品の中で、これだけ『(新・)東西ミステリー・ベスト100』にランクインしていないんですよね……ってかリューイン入っていないんですよね……解せぬ……。
製薬会社に隠された陰謀はしっかり作り込まれていて面白いし、サムスンの一人称には爆笑しっぱなしでむちゃくちゃ楽しいし、最後のドンパチ(的な何か)も熱いし、ラストのちょっとしたどんでん返しも驚けるし、読後タイトルのかっこよさが良い余韻だし、つまり傑作では(くどい)。
先ほどあげたような御三家ハードボイルドが苦手な人の方が、こういったネオ・ハードボイルド(というんですよね、リューイン以降のハードボイルドの一群を)を楽しめるのではないかと思います。適度にゆるいんですよ。私立探偵アルバート・サムスンは、暴力を嫌い、拳銃は持たず、酒はそこそこ、オレンジジュース大好き、という極めて普通人です。そういう人が奔走するさまの方が、個人的にはタフガイに対してよりもはるかに共感できます。

この楽しさの大きな一因は、明らかにサムスンの語りでしょう。とにっかくユーモラス。ウィットに富んだ会話の連発です。やっぱりね、こういったある種日本人が苦手とする、欧米作家の笑いに富んだ文章って、とっても素敵だと思うんですよ。ユーモア・ミステリではなく、ドタバタ劇があるわけでもなく、ただただ洒脱な会話やひねくれた地の文で楽しませる小説。昔の日本人作家にはこういったことが得意な人は結構いたようですが、最近はあまり見かけないような気がします(と言っても国内作家の小説を年に10冊くらいしか読まないので言ってることは適当です)。

さて、というわけで、これはオススメです。特に最後の行がもうすんばらしく、読み終わってニヤッとさせる感じが実にスタイリッシュ。リューインは良いです。今年中にパウダー警部補ものも読んでみたいのですが……間に合うかな……。

書 名:沈黙のセールスマン(1978)
著 者:マイクル・Z・リューイン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 165-4
出版年:1994.5.15 1刷

評価★★★★★
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/871-71298752