サイモンは誰か?
『サイモンは誰か?』パトリシア・モイーズ(ハヤカワポケミス)

はじめに、事務弁護士アンブローズ・クインスを悩ませていたのは“サイモンはどこにいるか?”という問題だった。サイモン・ワーウィック─チャールズ卿の莫大な遺産を継ぐことになった青年の30年にわたる空白の足跡をたどる困難な仕事だ。だが、新聞の広告での呼びかけは、たちまち効果を現わし、サイモンは現われた。そのときからクインスを悩ませる問題は変わった。“サイモンは誰か?”――つまり、二人のサイモン・ワーウィックが名乗り出て、正統な相続権を主張したのである!繊維業で巨万の財をなしたチャールズ卿に甥がいることはほとんど知られていなかった。大戦中、弟夫婦が爆撃で亡くなり、サイモンという男の子が一人残された。甥を引き取る余裕のなかった卿は、サイモンをアメリカ人夫妻の養子に出してしまい、以来その存在は忘れられていた。それが、慈善事業に寄付するはずだた全財産を甥に譲るという遺言を残し、卿は亡くなったのだ。二人のサイモン・ワーウィックは、それぞれ信憑性の高い書類を携えていた。どちらが本物のサイモンか?クインスの悩みは深まるばかりだったが……。二人の遺産相続人の謎は、やがてティベット主任警視を引っ張り出す殺人劇へと展開する。イギリス女流本格派の重鎮モイーズの魅力を十二分に発揮した話題作。(本書あらすじより)

傑作。これは非常に良い本格ミステリです。今年のベストテンには確実に入ります。
パトリシア・モイーズの代表作である本書ですが、いやはや、これすっごい面白いんですよ。

ポケミスのあらすじは長いのですが、ざっくり話すとこんな感じ。繊維業で莫大な財産を築いた老チャールトン卿は、遺言を書き換え行方不明の甥サイモンに全財産を残すよう命じて亡くなった。さっそく二人のサイモンが現れ、遺産を要求する。さらにはサイモンの登場をこころよく思わない会社の役員たちの思惑も重なり……。

まず、自称サイモンは両方身分を証明する具体的な証拠を持っているので話がややこしいのです。すったもんだのあげく、サイモンの一人が殺されてしまうのですが、これもそう単純な話ではなく、サイモンは何者かという謎と、誰が“サイモン”(かもしれない人)を殺したか、という謎が一体となっていて非常に複雑。
タイトルが「誰か」であることから、十分警戒はしていたんですけどねぇ。このサイモンの正体がかなりうぉっと思わせてかっこいいんですよ。読者の推理の余地はほぼないんですが、正体が分かる瞬間が絵的に映えるんです。ラストまでこの謎を引っ張らないさじ加減も素晴らしいですね。この真相に関してケチをつける人もいるらしいですが、そりゃ器が小さいってもんですよ。だいたいこの謎はメインじゃないし。

そしてサイモンの正体が分かると共に、犯人が一気に特定されスパパパパッとスリリングかつ小気味いい解決を迎えるのです。伏線が細かすぎて気付ける読者がいるかは疑問ですが、この伏線が指摘される度にいちいち納得のいく上手いもんだから文句も言えません。手掛かりはかなり地味ですが、数が結構多いし、指摘されればすぐにあっと思わせる絶妙なところを付いてくるせいで、気持ちよく騙された感を味わえるんですね。なるほど、確かにこいつしか犯人はいないよなぁ……(何となく検討つけられる読者も多いかも)。やっぱり本格ミステリはこうでなくっちゃ。くそぉ、なるほど、してやられたな、という思いを存分に味わえます。

そしてエピローグ。ほんの数行で、別に大したことは何もないんですが、これが案外かっこよくて読後ニヤッとしてしまいました。読み終わったあと、うわぁカッコイイ、とため息をついちゃったのです。初モイーズにしてモイーズさんに惚れ込んじまいました(いや作品の出来は結構ピンキリらしいですが)。

とにかく、『サイモンは誰か?』、おすすめです。有名なので読んだことある方も多いかもしれませんが、積んでいるという方はぜひ読んで下さい。何より楽しいですよ。こうなると、もうひとつの代表作、『殺人ファンタスティック』にも期待したいところ……近いうちに読みます。

書 名:サイモンは誰か?(1978)
著 者:パトリシア・モイーズ
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1343
出版年:1980.1.15 1刷

評価★★★★★
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