白夜に惑う夏
『白夜に惑う夏』アン・クリーヴス

シェトランド島に夏がやってきた。観光客の一団が押し寄せ、人びとを浮き足立たせる白夜の季節が。地元警察のペレス警部が絵画展で出会った挙動不審の男は、次の日、桟橋近くの小屋で道化師の仮面をつけた首吊り死体となって発見された。身元不明の男を、だれがなぜ殺したのか。ペレスとテイラー主任警部の、島と本土をまたにかけた捜査行の果てに待つ真実とは?現代英国ミステリの精華〈シェトランド四重奏〉第二章。(本書あらすじより)

毎日連続記事投稿4本目。昨日に引き続いてクリーヴスです。
うぅん……やっぱりクリーヴスはいいなぁ……。翻訳された三作全部読みましたが、どれも持ち味があって素晴らしいですね。どれがいいとかではなく。“地味”というのは共通していますが(笑)

前作以上に狭いコミュニティを扱いつつ、本土からの観光客を取り入れることで、人間関係に奥行と深みが出ています。今作もシェトランドという舞台が十二分に生かされていますね。コミュニティがより小さくなったためか、クリーヴスのうまみが500ページにこれでもかとばかりに凝縮されているように思います。

幻想的なオープニングや妙な死体など、三作の中でつかみは一番かもしれません。対してキャラクターは、三作の中でもかなり地味寄り。第一作は地元の名士や学校教師が出てきますし、第三作では島外からの調査団が登場します。が、『白夜に惑う夏』のメインキャラクターは、とんでもなく地味な田舎者ばかり(笑)しかし彼らが各々味わい深く、ぐいっぐいと読ませるのです。これぞクリーヴス節。終盤では、登場人物たちがあまりにも都合よくまとめられていきますが、このベタっぷりが本当に良いんです。「15年前の~」なんて設定とか、ベタだけど熱いです。熱すぎます。
登場人物では、今回三人称視点として選ばれたテイラー警部と農場主ケニー・トムソンに好感を持てます。前作では本土から来た捜査官ながら曖昧なポジションのくせに、妙に印象に残ったテイラー。奥さんとラブラブな50代のトムソン。いかにも女性作家らしいキャラクター造形だと思いますが、そんな二人が非常に魅力的なのです。トムソンパートはさらに情景描写も加わり、もはや美しいのレベルに達しています。

意外な真相や犯人ももちろん見所だとは思いますが、クリーヴスの楽しみ方というのは、人物関係などを浮き彫りにしていく捜査過程でしょう。ここを楽しめない人にはやっぱり退屈だろうなぁという気もします。シェトランドの雰囲気に浸りながら、じっくりと読ませる地味な英国本格ミステリ……やっぱり良いですねぇ。今作もお勧めです。
なお、シリーズ第四作が2013年の春に発売予定だとか。いやはや、今から楽しみにしたいと思います。

書 名:白夜に惑う夏(2008)
著 者:アン・クリーヴス
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mク-13-2
出版年:2009.7.31 初版

評価★★★★☆
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