巡礼者パズル
『巡礼者パズル』パトリック・クェンティン(論創海外ミステリ)

従軍で精神を病んだダルースは一時的に妻アイリスと離れることを決意。それが功を奏して復調したダルースは、妻のいるメキシコへと発った。アイリスに新しい恋人がいるとも知らずに……。愛と金が絡み合う人間関係に否応なく巻き込まれていくダルース。愛する者のために奮戦する彼を待っている結末とは。本格ミステリ・ファン待望の“パズル・シリーズ”最後の未訳作、ついに登場。(本書あらすじより)

今年はクェンティンのパズルシリーズが3冊も訳されたわけですが、そのパズルシリーズ第6作がこの『巡礼者パズル』です。本格ミステリ・ベスト10では、海外部門で堂々の一位。まぁこれは、『死の扉』『俳優パズル』といった面々が復刊だったため、遠慮した人が多かった、ということもあるのかなと思いますが。

さて、自分はまだ『迷走パズル』『俳優パズル』しか読んでおらず、新刊で手に入るシリーズ第4・5作、『悪女パズル』『悪魔パズル』は未読です。ですので、ピーターとアイリスの関係については超絶イチャイチャしていて結婚にこぎ着けた『俳優パズル』までの状況しか知りませんでした。
で、『巡礼者パズル』……あ、あれ、離婚の話をしてるよ……。

アイリスは他に男が出来るわ、ピーターはアイリスを忘れられないけどまたいい感じの仲の女が出来てしまうわ、その女はその女で別の男がいたりいなかったりするわ、なんというか、壮絶な破局を読者は見せ付けられるのです。うっぉぉぉい、どうしてこうなった……。パトQは、後年になればなるほどサスペンス色の強いミステリを書くようになりますが、その兆候が既にこのパズルシリーズではっきりと現れているわけですね……つらい……。しかもこれがまた面白くて読ませるんだな……。

もつれあった五角関係(ってなんだ)による心理描写とサスペンス、さらに本格ミステリとしての地味ながらいい仕事が合わさり、他に類を見ないエグい傑作本格として仕上がっています。同作者のシリーズがこうまで変わるというのも面白いですが、それでもシリーズらしさを保っているのがまた興味深いですね。おそらくこれこそが作者(共作ですが、特にホイーラーの方でしょうね、もちろん)がやりたかったことであり、それが見事に結実した、稀有な作品だと言えるのではないでしょうか。
とにかくこの五角関係が見所。少ない登場人物でフーダニットをやるのはなかなか難しいことですが、作者はサスペンス性を強めることでかえって犯人当ての難易度を上げている気がします。メキシコという異国情緒豊かな湿度高めの舞台がまた、緊迫した雰囲気作りに大きく貢献しています。登場人物誰もが強烈な性格で、彼らのピリピリした関係になぜかグイグイ引き込まれてしまい……やっぱり上手いなぁ。

今年読んだ『迷走』『俳優』『巡礼者』のどれが一番面白いかというと……ぬるい自分としては、結局『俳優』を選んでしまうんですけどね。しかし『巡礼者』にまとわりつく暑苦しさも捨てがたく、これはこれで非常に良いミステリであることは間違いないでしょう。ちなみにBGMとして、作中に登場する曲をYouTubeで探して流すと、いかにもメキシコっぽくなります(笑)

なお、『巡礼者パズル』の解説ですが、(作者が本当にここまで考えていたのかという気もしなくはないですが)非常に詳しい考察がなされていてとっても良いです。が、『迷走パズル』を読んでいない人は開いてすらいけません。ついでに言うと、以前にも言いましたが、『迷走』を読んでいない人は出来れば『俳優』も開かないで欲しいのです。さらに言えば、『迷走』も『俳優』も読んでいない人は、パズルシリーズが「シリーズ」だということ以外はあらゆる情報をシャットアウトして欲しいのです。aga-searchを見るのもダメ。『俳優』から読んだっていいんですが、『迷走』から読んだほうがはるかに『迷走』を楽しめると思うんですね(これも前に言ったな)。
まだ読んでいないから適当なこと言っていますが、『悪女』『悪魔』は、『迷走』『俳優』新訳以前に出たものなので、『迷走』に関してそこまで突っ込んだ説明、ネタバレもどきみたいな解説にはなっていないんじゃないかな、と予想しています。パズルシリーズ残りも早めに読みたいですね。

書 名:巡礼者パズル(1947)
著 者:パトリック・クェンティン
出版社:論創社
    論創海外ミステリ98
出版年:2012.8.30 初版

評価★★★★☆
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