ウィチャリー家の女
『ウィチャリー家の女』ロス・マクドナルド(ハヤカワ・ミステリ文庫)

フィービ・ウィチャリーが失踪したのは霧深い11月のことだった。それから三ヶ月、彼女の行方はようとして知れなかった。そして今私立探偵のアーチャーは、父親の大富豪ホーマー・ウィチャリーに娘の行方を探してくれと依頼された。フィービの失踪は彼女の家庭の事情を考えれば、当然のことだった。調査を進めるアーチャーの心にフィービの美しく暗い影が重くのしかかる!アメリカの家庭の悲劇を描き出す巨匠の最高傑作。(本書あらすじより)

初ロス・マクドナルド。毎月恒例ハードボイルド読書会用に読んだものです。『さむけ』と並ぶ彼の代表作で、近頃話題の新版『東西ミステリーベスト100』では57位にランクインしています。
ですけど……うぅん、面白いことは面白いんですが、そこまで傑作とは感じられませんでしたね。やっぱりハードボイルドは合わないのでは、というか、ロスマクの空気感にそこまで浸れなかったというか。とりあえず、『さむけ』を読むまではいろいろ保留にしたいところです。

まず、今まで読んで来たもの(『マルタの鷹』『長いお別れ』)と比べ、vs社会とかvs組織ではないので、より(こんな言い方は良くないけど)本格ミステリっぽい、とは言えると思います。
失踪した女性の行方を突き止めるべく、探偵アーチャー(結構正確的にはぬるめなのね)は聞き込みを続けていくわけですが、これ自体は面白いのです。そうですね、350ページまでは十分読ませます。延々と証言を集め、登場人物の関係が整理されていく様が、地味中の地味ながらもかなり読ませるんですよ。
んがしかし、個人的には、あることが起きて以後、急速につまらなくなっていった印象があります。事件への関心がなくなったというか。結末や読後感もなかなか良かったのですが、それでも終盤乗れたかというと微妙。んー、なぜでしょうね。
ネタバレっぽくなるので上手く言えませんが、つまり350ページまでは「消えたフィービの謎」という推進力があり、なおかつ事件の裏が読みにくいという面白みがあったんです。が、ある点以降、いきなり安っぽく、ありきたりの事件になってしまったように思えるんですよ。アーチャーのぬるさも話としてはいくらか裏目に出ているかもしれません。

もうひとつ、これは読書会であげられた問題点らしきものなんですが、アーチャーの聞き込みは次の選択肢があまりに一つに限られていることが、面白みを損なう原因ではないか、という意見がありました。ある人のところに行き、話を聞き、誰それが次の情報を持っているらしいことが分かり、次の章ではその人のところに行き……という。例えるなら、選択肢が一切ないアドベンチャーゲーム。普通なら、ここまで次の相手が限定されているようには感じないため、探偵が誰のところに行くか、どういう話を聞き出すのか、というある種の意外性・楽しみが生じるわけですが、どうも『ウィチャリー家の女』はその点が圧倒的に弱いのではないか、ということですね。なかなかなるほどと思わせます。

というわけで、総じて悪くはないのですが、はまれなかったなぁというところでした。残念。次のハードボイルド読書会の課題本はリューイン『A型の女』だったのですが……ま、これの感想はまたしばらくしたらあげますので、乞うご期待ということで(笑)

書 名:ウィチャリー家の女(1961)
著 者:ロス・マクドナルド
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1
出版年:1976.4.30 1刷
    2009.11.15 17刷

評価★★★☆☆
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