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『天使のゲーム』カルロス・ルイス・サフォン(集英社文庫)

1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短篇を書くチャンスを与えられた。1年後、独立したダビッドは、旧市街の“塔の館”に移り住み、執筆活動を続ける。ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受ける。世界的ベストセラー『風の影』に続いて“忘れられた本の墓場”が登場する第2弾。(本書上巻あらすじより)

前作『風の影』は「けなせない」作品でした。「面白くないわけがない」作品と言ってもよろしい。
いやだって、面白いに決まってるじゃないですか。古都バルセロナで繰り広げられる熱い冒険、きれいにまとまりよく張り巡らされた伏線、読者を惹きつける魅力的な謎、そりゃあ面白いですってば。
ですけどね、それはつまり、「超面白い」作品にはなれない、ということでもあるのです(自分の中では)。楽しめるのは間違いないけど、でも何か物足りなさを覚えるのも事実なのです。


……で、『天使のゲーム』です。たぶん、今回も同じような感じだと思っていたのです。

いやいやいや、とんでもない、サフォンさんを見くびっておりました。

簡単に言うと、『風の影』が「うん、まぁ、もちろん面白いよ」くらいなら、『天使のゲーム』は「うぉぁぁあ、え、なに、すげぇ、おもしれぇ、で、ラストは?これ? マ ジ か!!!!!」です。全然分からない? そうでしょう、私にだって何が起こったのかさっぱりわからないのです(爆)
これは好き嫌いが別れそうですね〜。特に『風の影』が大好きな人ほど割れそう。自分は断固『風の影』より『天使のゲーム』派です。大好きです。素晴らしかったです。文句のつけようがあるのもまた良し。

えー、真面目に感想を書きますとね。
物語としての面白さ、魅力的な登場人物といったサフォン節、複雑に伏線を仕込むミステリ仕掛けに加え、奇怪さ・幻想味が印象的な、読書を引き付け一気に読ませる驚きの作品なのです。今年の新刊ではベストかなぁ。
前作は海外エンタメによくある「もちろん面白い」といったものでしたが、今作は内容の好み云々はひとまず置いても、格段に上手くなっています(少なくとも上巻に関してはみんな同意してくれるはず)。より引き締まった展開、破滅(?)に突き進む主人公、次々と提示される謎など、とにかく読者を飽きさせません。これだけやってくれるなら、上下巻というのも納得の分量です。
上巻はとにかくグイグイ読ませ、いったい何が起きているのか気になって仕方ありません。まぁしかし、正統派っちゃあ正統派です。『風の影』っぽいですね。ところが下巻では、こりゃいったい何なんだ、的雰囲気が一気に強まり……で、衝撃的な結末に至るのです。これはすげぇ、やっちゃったよサフォン先生、といった感じ。ちなみに、なかなか混乱した展開ですので、訳者あとがき(とっても良い)によりようやく作品を理解出来たところもあったりします。ある種文学的な挑戦とも言えるのかな。いやぁ、これはぜひ読んでみて欲しいですね。

物語の魅力を数倍増しにしている(と個人的に思っている)のが、主人公(30歳)の世話を焼く女の子イサベッラ(17歳)。もう、ね、とりあえず、読め、超可愛いぞ。上巻後半、彼女が出てからが本番と言っても過言ではないです。そういえば、物語上での役割が『二流小説家』のクレアと非常に似通っているのが興味深いですね(クレアとイサベッラのどちらが可愛いかというのをいつか議論してみたい)。
サフォンは魅力的な登場人物を描くのが抜群に上手いのです。イサベッラだけでなく、あらゆる登場人物が、一回きりしか登場しない端役に至るまで、生き生きと紙の上を、バルセロナを動き回っています。そういった点では、メインヒロインであるクリスティーナの魅力がいまいち伝わらなかったのが、残念っちゃ残念かな。そんなに惚れるような女かな……。うぅむ、これはね、結構みんな感じるんじゃないかと思っているんですが。


ちなみに、なかなか評判のよろしくない終盤の展開ですが。残り70ページの時、自分はこうツイートしました。
「あと70ページしかないのに、話が『幻の女』みたいに意味が分からなくなって来てて、どう収拾をつけるのか楽しみでしょうがない。」
で、結論からいえば、収拾はつきませんでした(笑) いやね、正直、力技で終わらせた感はあるんです。確かにちょっとやり過ぎ・盛り込みすぎ。それは否定しません。
ただ、それで不満足かと言うとそうでもないんですよ。序盤からずっと漂っていた違和感が、ある意味違和感のまま終わってしまう、それこそがこの作品の醍醐味ではないかと思います。まぁ、こういう破天荒な、まとまりのない方が、色々な意味で面白いんですよ。


というわけで、『天使のゲーム』、オススメです。読書の楽しみを与えてくれる傑作。泣けるしね。別に『風の影』読まなくても大丈夫ですし。『風の影』の方が、はるかにまっとうなエンタメだとは思いますが、自分の好みは違うのでした。果たして第三作では、サフォン先生は何をやらかして来るんでしょうか……ふ、不安だ……。

書 名:天使のゲーム(2008)
著 者:カルロス・ルイス・サフォン
出版社:集英社
    集英社文庫 サ-4-3、サ-4-4
出版年:2012.7.25 1刷

評価★★★★★
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