ガラスの村
『ガラスの村』エラリイ・クイーン(ハヤカワ・ミステリ文庫)

〈シンの辻〉と呼ばれるニュー・イングランド北部の一寒村。 独立記念日の翌日そこに住む老女流画家が無残にも撲殺された。が、犯行時刻ごろ、村人が彼女の家へ入った一人の男を目撃していた。事件はあっけなく終わるかに見えた。ところが、逮捕された男金を盗んだ事実は認めても、殺人の件は頑強に否定。女流画家の家へ行ったのは薪割りを頼まれたからだという。だが、証拠となるはずの薪は、煙のように消え失せていた!巨匠エラリイ・クイーンが展開する、精緻な論理、読者への挑戦、意外な結末!1954年発表の問題作。(本書あらすじより)


傑作!!!!!いやぁ、今まで読んだクイーンの中で、一番楽しめたかもしれません。今年は『災厄の町』以後のクイーン作品ばっかり読んでいるわけですが、どう考えても初期作より面白いですね。その中でも『ガラスの村』の単純な”面白さ”は一つ抜けているような気がします。

外界との接触がほとんどない閉鎖的な村で、誰からも好かれているおばあさんが殺害されます。その家から出てきたところを見られていたポーランド人が、村人から犯人だと決めつけられ捕まえられ、ほぼリンチまがいの扱いまで受けてしまいます(「ガイジン」というだけで差別するような村ですよ)。その村の住人は、とある過去の事件のせいで、外の世界の連中を全く信用していないのです。村人の中で唯一理性的な老判事、およびたまたまそこを訪れていた従兄弟のジョニー・シン(主人公)は、何とか真犯人を見つけ、ポーランド人を助け出そうとするのですが……。

……というあらすじからも分かる通り、話としてはやや暗めです。が、こういってはなんですが所詮はクイーンなので、陰湿さなんてものはなく、そのへんは心配ご無用。作者はマッカーシズム批判の意味合いを込めて書いたらしい(本当に執筆したかはともかく)ですが、まぁそんな政治的云々なんてものはどうでもいいのです。
偏見の塊みたいなリンチ大好き村人軍団vs理性派常識人法律組、という構成がまず燃えますよね(登場人物一覧はかなりこれに意識的で、作った人はそうとうセンスがいいです)。キチガイ裁判(ある種の笑い所)を経て明かされる意外な真相。この裁判が、物語の中で実に上手く使われていてとっても良いのです。本格ミステリとしては十二分の出来でしょう。一部では、本格ミステリとしての出来に不満足(そうか?)で、この作品を好まないクイーン信者もいるらしいですが……そりゃ構成こそ破格ですが、これだけの出来に文句をつけるのはどうかと思いますよ。

とにかくストーリーがものっそい読ませるので、文句の付けようがありません。今回、名探偵エラリイ君は不在ですが、正直この作品にシリーズ主人公なんて邪魔なだけです。ジョニー・シンという新たな人物が探偵役であることで、ある種の緊張感と深みが生まれています。クイーンはもっとノンシリーズを書きゃ良かったのに……。
強いて言うならオチをもっと捻って欲しかった気もしますが、クイーンはあくまでガチ本格作家なわけで、これはこれで構わないというか、しょうがないんじゃないですかね。良い物を読めたので実に満足。これは強くオススメできます。久々に星5つつけちゃえ。

クイーンのノンシリーズ長編って、あと『孤独の島』というのがあるらしいですね……な、名前すら知らなかったんですけど。あらすじ見たら、だいぶぶっ飛んでて面白そう。気楽に探してみます。

書 名:ガラスの村(1954)
著 者:エラリイ・クイーン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 2-8
出版年:1976.8.31 1刷
    2002.4.15 16刷

評価★★★★★
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