推定無罪 上 推定無罪 下
『推定無罪』スコット・トゥロー(文藝春秋)

アメリカ中部の大都市、地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補が全裸で殺されていた――。クリスティ的犯人さがしの妙味、検察出身の作者の経験を生かした圧巻の法廷場面、地方都市の政治・司法・警察の実態をまるごと捉えた、社会小説的な視点、なにをとっても第1級の傑作。驚異の世界的ベストセラー、シルヴァー・ダガー賞受賞。(本書あらすじより)

へー、シルヴァー・ダガー賞取っていたんですか。初めて知りました。

さて、久々の更新ですが、久々になった理由というのが他でもない、この『推定無罪』の感想を書くのに乗り気でなかったということなのです。
……といっても別につまらなかったとか、そういうことではないですよ。『推定無罪』が発表されたのは1987年ですが、「1980年代以降に出た超重要傑作ミステリをあげよ」と言われたら確実に名前があがるくらい、素晴らしい法廷ミステリです。意外な真相・犯人を提示しつつ、「推定無罪」の表す意味、アメリカ法曹界をじっくりと描き出した、類まれなる作品でしょう。法廷シーンの面白さは尋常ではないし、独特なラストはなかなか印象的で、これもまた上手いなぁと思わされます。
ですから、ここで自分がごちゃごちゃ言おうが言うまいが、読んで損はしないはず。そういった作品なのですが……。

読了後のtweetをちょっと引用します。


スコット・トゥロー『推定無罪』読了。とにかく心理描写がハンパなく上手い(外見描写は全然なのに)。主人公の一人称視点によりあぶり出される各々の感情。それだからこそ、「推定無罪」という語に現れているように、人の考えや真実なんて結局分からない……というテーマが強烈に感じられる。
下巻から法廷シーンが始まるのだが、これがめっぽう面白い。何と言うか、もうボッコボコで、カタルシスがすごい。皆が裏切りやがってはめられて誰も信じられないよ主人公大ピーンチ、みたいな状況かと危惧していたら、弁護側が優秀過ぎる味方だったのでそんな心配は不要だった。


……とこれだけなのですが、これって自分としては、面白かったけど、あと一歩、みたいな感じだと思うんですよね。手放しで好きになれているわけではありません。
では、なぜ素直に褒められないのか?……という話を始めてしまうと、ネタバレ必至でどうしようもないので、とりあえず感想はこれで終わりにします。ネタバレ雑談については、追記の方に、白字で書く事にしますか。

書 名:推定無罪(1987)
著 者:スコット・トゥロー
出版社:文藝春秋
出版年:上 1988.10.1 1刷
    下 1988.10.1 1刷
      1989.2.15 6刷

評価★★★★☆

[以下、ネタバレあり]





















[※注意!以下、伏字でネタバレあり]

さて、手放しで褒められない理由ですが……いや、面白いだけになかなか難しいんですけどね。

まず、書き方があげられるのかな、と思います。この小説は主人公ラスティ・サビッチの一人称で語られているのですが、どうもこの語りが淡白すぎるのです。感情的な面が中途半端に抑えられていたり、心情を吐露しなかったり。
もちろんこれは(読了後すぐにわかりますが)狙ってやっていることですし、いわゆる一種の「信頼できない語り手」なわけですが、しかしどうにも違和感を感じざるを得ないのです。というのも、他の登場人物……主人公の奥さんやレイモンド・ホーガン、弁護士サンディ・スターンの心情・感情を描くのが半端なく上手いんですね。些細な行動や、表情の描写などから、登場人物の心の動きを描き出すのが抜群に上手いのです。ですから、のらりくらり、ぼやぁぁっと書かれた主人公が、なんとなく気持ち悪いんですよ。

もうひとつの理由……これはミステリとしての側面ですが、結局リトル判事やキャロリンの犯していた不正が、全く、本筋とは関係なかった、ということに対する不満足感です。作品全体を通した大きなミスディレクションであり、そういった手法自体は別に構わないのですが……これいるか?という思いが拭えないのですね。例えば裁判そのものですが、これはどう見ても弁護側の圧勝です。もう気持ちがいいくらい。ですから、リトル判事が胡散臭い理由で即効で無罪判決を下したらしい、と言われたところで、いやそれなくても普通に無罪だったじゃん、としか思えないんですよ。

大きくいってこの二点でしょうか。ケチつけるほどのことでもないし、問題なく面白いし、というか法廷シーン熱すぎだろと思うんですが……と、ちょっとグチグチ言ってみました。
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