花窗玻璃
『花窗玻璃 シャガールの黙示』深水黎一郎(講談社NOVELS)

仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが半年後、また死体が!二人の共通点は死の直前に、シャガールの花窗玻璃を見ていたこと……。ランスに遊学していた芸術フリークの瞬一郎と、伯父の海埜刑事が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る。(本書あらすじより)

深水さんの本を集中して読むぞ的企画第3弾です。というか、講演前にこの3冊だけ読んどきゃ問題ない、と聞いたもので。
発表順に読んでいないせいで、『ウルチモ・トルッコ』の海埜刑事と、『ジークフリートの剣』の瞬一郎って親戚だったのね……などという驚きもあったり。ちなみに、この小説の90%は瞬一郎の手記(というか実話を元に作った小説)という形で構成されており、海埜刑事が瞬一郎からその手記を渡されて読んでいる、ということになっています(特に深い意味はありませんが)。

さてそこで面白いのが、瞬一郎が古き良き日本語の良さが云々という理由から、自分で書いた小説では全くカタカナを使っていない、ということです。「ステンドグラス」ではなく「花窗玻璃」だったりね。明治翻案小説っぽく。人物名まで漢字。おぉ、すごい試みです(作者さんの)。
この試みには実はもう一つの理由があるのですが……ま、これはオプションというか、おまけみたいなものですし、言ったもん勝ち感はありますけどね(笑)


えー、説明ばっかりで全然中身に踏み込んでいませんが。
あらすじにあるように、舞台はフランス、つまり容疑者も外国人。リアルなランス大聖堂を舞台に、ランス大聖堂のウンチクやら芸術のウンチクやらウンチクやらウンチクやらを織り交ぜつつ、連続怪死事件を瞬一郎が解き明かしていくわけです。ランス大聖堂で戴冠式を行わなかった二人の国王、とかね、世界史好きとしてはタメになる話ばっかりですねー。
さらにあらすじにあるように、事件は密室だったりもするのです。おぉ、ミステリ的にはイマイチというか、そもそもミステリいらない感すらある『ジークフリートの剣』と比べ、はるかに「芸術ミステリ」っぽい!面白い!

そしてとりあえず事件はちゃんと解決されるのですが、本格ミステリとしては非常に真っ当な出来、といったところでしょうね。密室トリックは、まぁ何と言うか国内物っぽいものでそんなに好きではないんですが、第一の事件と第二の事件の皮肉なつながりが絶妙です。第二の事件の真相も、ウンチクが合わさるとなかなか興味深いですね(自分は単純なので、この程度の本格で十分驚けます)。とはいえ、そこまで飛び抜けたものは感じません。例によって感動オチで終わり、ま、いいもの読んだな、といったくらいでしょうか。

……が、読了後、「ミステリっぽい本とプログレっぽい音樂」さんと「黄金の羊毛亭」さんの解説を読んでさらにぶったまげました。い、いやぁ……すごい。これはすごすぎます。このような「しばり」をかけてここまで精巧なミステリが書けるものなんでしょうか……お見事という他ないですね(詳細は、読了後、羊毛亭さんのページの解説を見てくださいな)。まさに「芸術ミステリ」と呼ばれるにふさわしい、文句のつけようもない傑作でした。
こういう、なんですか、読んで頭が良くなった気分になれるようなミステリっていいですねー。勉強になります。

というわけで、珍しくべた褒めの国内ミステリでした。これはお勧めです。基本国内作家は読まないことにしていますが、深水さんの作品だけは例外的に追ってみても面白いかも。

書 名:花窗玻璃 シャガールの黙示(2009)
著 者:深水黎一郎
出版社:講談社
    講談社NOVELS
出版年:2009.9.7 1刷

評価★★★★★
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/844-2d927b79