死者を起こせ
『死者を起こせ』フレッド・ヴァルガス(創元推理文庫)

愛称マルコ、マタイ、ルカの、それぞれ専門の異なる若く個性的な歴史学者と元刑事が、ともに暮らすパリのボロ館。その隣家に住む引退したオペラ歌手の婦人が怯えていた。ある朝突然、見知らぬ木が庭に植えられていたというのだ。ボロ館の四人がその木の下を掘るが何も出ない。そして婦人は失踪した。いったい何が起こったのか?気鋭の女流が贈る仏ミステリ批評家賞、ル・マン市ミステリ大賞受賞の傑作。(本書あらすじより)


数えてみたら、今年に入ってヴァルガスを読むのは3冊目なのでした。この「三聖人シリーズ」の第三作がこの間出たばかりなので(それに合わせて読んだんだけど)、合わせて計4冊読むことになりそうです。同一作家を年間に何冊も読むことのない自分にしては珍しい。うぅむ、ま、読みやすいからねー。

というわけで、「三聖人シリーズ」第一作です。アダムスベルグ署長を主人公とした『青チョークの男』『裏返しの男』とは別シリーズですね。

例によってエキセントリックで賢すぎるキャラがわらわら登場し、とりとめなすぎる独特な文体で淡々と物語が進行します……つまり、いつものヴァルガスワールドです。ただ、アダムスベルグ署長シリーズと比べて丁寧な本格物、っぽい印象を受けます。でもまぁ、かといってガチガチの論理やってるとか、そういうわけでは全然ありませんし。まったりした雰囲気を楽しむのがメインかな。

ただ、ホワイダニットもフーダニットも良く出来ているし、素直に感心しましたが、あまり驚けなかったのはなぜなんでしょうか。いろいろ要因はあると思いますが、ラストの空気がやや異質になり、読者がおいてけぼりになってしまった……という理由が大きい気がします。いや、とっても面白いんですよ。けど、もっと面白くなるはずです。上手く説明出来ませんが、んー、なんか惜しさを感じるんだよなぁ。

元刑事のおじさんがアダムスベルグ署長っぽい、きっかけが共に不可思議な現象であるなど、『青チョークの男』との似た点がちらほら見られます。三聖人の中ではマタイことマティアスがイケメン過ぎるので彼に大いに萌えるべし。もうね、やることなすことイケメン過ぎて羨望すら感じますよ、えぇ。ま、あんまり深いキャラクターとは思えないんですが。
……というか主人公らしきマルクのキャラが案外薄くないですか?(笑)


全体的に、キャラ、謎、結末、雰囲気など、全ての点で『青チョークの男』が勝っている気がします。ヴァルガス初読者は『青チョーク』から入った方がいいのではないでしょうか。そしてアダムスベルグに萌えなさい。あーもう彼はとことん素敵なんですよ。最高ですよ。ザ・名探偵ですよ。超カッコイイですよ。……いったい自分は何の話をしているんでしょうか?(爆)

えー、ごほん。とにかく、『死者を起こせ』は非常に面白いんですが、エキセントリック成分というか、不思議ちゃん度合いがちょっと大人しめかな、ということです。でもまぁ、『青チョークの男』を読んだ人はヴァルガスを好きになること確定なので、結局はこのシリーズも読むし、ちゃんと満足できるでしょうね。はい、皆さん『青チョークの男』を読みましょう。

ちなみに、どうせすぐ値段が変わってしまいそうなのでここにメモっておきますが、2012年9月2日現在、Amazonの『死者を起こせ』は新品品切れ、中古3128円より、となっています。前日までは在庫もあって普通だったらしい。やっぱりマケプレはあてにならないですね……。

書 名:死者を起こせ(1995)
著 者:フレッド・ヴァルガス
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mウ-12-1
出版年:2002.6.14 初版

評価★★★★☆
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