『そして誰もいなくなった』殺人事件
『『そして誰もいなくなった』殺人事件』ジャックマール&セネカル(集英社文庫)

アガサ・クリスティーの代表作『そして誰もいなくなった』を上演しているパリの劇場で、あたかも原作をなぞったような大量殺人が発生した。そして第2、第3の殺人が……。事件のカギは悲劇的な死を遂げた往年の大女優か?老俳優サンソンと舞台演出家ステファノプーロスの推理が始まる。'77年『グリュン家の犯罪』でパリ警視庁賞を受賞した名コンビがおくる、サスペンスとエスプリにあふれたフランス・ミステリーの傑作。(本書あらすじより)

この本、ほとんど話題にあがることはありませんし、絶版ですし、集英社文庫ですしで、何かと目立たないのですが、色々な意味でスペシャルに面白いです。色々な意味で衝撃的。色々な意味で規格外です。

クリスティー『そして誰もいなくなった』の劇をフランスで上演することになり、もちろん10人の俳優&1人の演出家が集まるわけですが、こやつらが100ページかけてギスギスと緊迫した雰囲気を作り上げて来ます。いやおかしいでしょ、と言いたくなるくらい過去の因縁とか悪口とか何だとかかんだとかがボロボロ出てくるわけですね。一種即発、まさに殺人事件まっしぐら、みたいな。で、当然のように殺人事件が発生します。

……やー、もう、これ以上は言えないのがつらいですね。おそらく誰もが読んだことのない展開が、100ページにて、読者を待ち受けています。これは衝撃的です。笑いが止まりません(不謹慎)。さっすがフランスミステリ、やること考えることが一味も二味も違います。

その後の捜査は、極めてオーソドックス、真っ当な本格ミステリそのものです。というか、この作品の良いところは、様々な点でフランスミステリらしい皮肉さがありつつも、基本的にはかなりマトモな本格ミステリだということですね。終盤のどんでん返しの連続もなかなか。クリスティーを意識している様がありありと見られ、これもまたファンサービスとして大変良いです。

唯一問題点があるとすれば、最後に提示される真相が他の真相より必ずしも説得力がない、ということでしょうか。ぶっちゃけ証拠不足ですし。ただ、こうまでして読者をひっかけようとした態度は高く評価したいですし、何より面白いので別に構わないのでは、と思います。

というわけで、古本屋さんで見かけられたらぜひ買ってみてくださいな。なお、本書は集英社Playboy books『十一人目の小さなインディアン』を改題・文庫化したものらしいです。こうなるとこの作者のミステリを他にも読みたくなりますね。やっぱりフランスミステリはどこかずれていて読みがいがあります。

書 名:『そして誰もいなくなった』殺人事件(1977)
著 者:ジャックマール&セネカル
出版社:集英社
    集英社文庫 51A
出版年:1983.9.25 1刷

評価★★★★☆
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