火刑法廷
『火刑法廷』ジョン・ディクスン・カー(ハヤカワ・ミステリ文庫)

編集者のエドワードは、社のドル箱作家の書き下ろし原稿を見て愕然とした。添付されている十七世紀の毒殺犯の写真は、まごうかたなく妻マリーのものだった!しかもその夜、隣人の妻にかかる毒殺容疑の噂の真相を追い、墓を暴きに出かけた彼は、妻の予言どおり、棺から死体が消失しているのを発見した……婦人毒殺魔が流行のように輩出した十七世紀と現代が妖しく交錯し、カー独特の世界を創出した第一級の怪奇ミステリ。(本書あらすじより)

『幻の女』に続いて名作消化タイムに突入しています。当然ですけど、当たり外れの多い新刊を読むよりはるかに楽しいですね。とか言ってるとますます新刊が読めなくなる……。
で、『火刑法廷』、ようやく読めたわけですが……。

……うぅん、何と言うか、非常に感想が書きにくいです。全面的にこの作品を肯定していないから、でしょうね。好きな方には真に申し訳ないですが。というわけで、感想文も何となくまとまりない感じですが、まぁお許しを。ささっと書きます。

まず本格ミステリとしての側面です。この点を褒めている人をよく見かけるのですが、個人的には、ぶっちゃけそれほどでもないな、という感じを受けました。密室からの消失トリックが2つ用意されていますが、そのうち死体消失については読者には見破りにくくなりすぎている感があります(もっとも、これは文化圏の問題で、西洋の人には納得出来るのかもしれません)。消えた貴婦人については、なるほどとは思いますが、それ以上でもそれ以下でもないというか。とはいえ、全体としてかなりキッチリと作られていることは確かですし、完成度は水準以上だとは思います。

そして怪奇小説としての側面ですが、こちらは良いですね。序盤からたたみかけるように不安をあおるエピソードが続けざまに投入され、中盤~終盤にかけて謎解きの要素が強まることでいったん落ち着くものの、最後にまた一気にぶち壊す(文字通り)ことで、「いやいやいやいやいや」と驚きを隠せないような結末を迎えています。
……しかし残念なのは、こういうオチだよ、というのを、別のカー作品とマクロイの某作品でネタバレされてしまったことでした。いやもう、つくづく悔しいです。また、『火刑法廷』より先にマクロイの某作品を読むことは断じてお勧めできません。

しかし、そのマクロイとカーを両方読んで思ったのですが、いえ、本質的には完全に両者は別物ですけど、どうも自分はこの手のオチが好きではないのかな、という気がします。いわゆる、本格読者の期待を裏切ることで意外性を演出しているわけですが、もう、何と言うか、タイプじゃないんです。こればっかりはしょうがない。

ま、歴史的に見ても重要な作品ですし、そもそも面白いので、やはり読んでおくべきでしょう。カーのベストか、と言われると……今まで読んだ10作品の中では、到底トップとは言えないな、というのが現時点でのコメントです。

書 名:火刑法廷(1937)
著 者:ジョン・ディクスン・カー
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1
出版年:1976.5.31 1刷
    2005.9.15 15刷

評価★★★☆☆
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