湿地
『湿地』アーナルデュル・インドリダソン(東京創元社)

北の湿地にある建物の半地下の部屋で、老人の死体が発見された。金品が盗まれた形跡はなく、突発的な犯行であるかに見えた。だが、現場に残された三つの言葉のメッセージが事件の様相を変えた。次第に明らかになる被害者の隠された過去。衝撃の犯人、そして肺腑をえぐる真相。シリーズは世界四十カ国で紹介され七百万部突破。グラスキー賞を2年連続受賞、CWAゴールドダガー受賞。いま最も注目される北欧の巨人、ついに日本上陸。

サークルへの献本により、一足早く読むことが出来ました。というか、献本って読むのは初めてですねー。まだ未完成のペーパーバックの状態で読んだんですが、ぶっちゃけこっちの方が読みやすいんじゃないですか(笑)ちなみに本書はシリーズ第3作にあたるそうです。

さて、ようやく刊行されたので感想をアップ出来ますが、非常に面白かったです。北欧系の警察ミステリとしてはかなり良い線言っているのではないかと(偉そうなことを言いながらそんなに読んでないですけど)。ちなみに北欧系の例にもれず、気温というか雰囲気が寒いです。良いね良いね。

とにかくリーダビリティの高さが半端じゃありません。翻訳物にしては、という表現は嫌いなんですが、実際これはものっすごく読みやすかったです。特に中盤以降、章ごとの引きが上手いんですよ。とにかく先が気になって仕方がありません。ぐいぐいと引き込まれてしまうこと間違いなし。

序盤〜中盤はいわゆるモジュール型です。加えて、メインとなる殺人事件の捜査が極めて多角的にまとまりなく行われるため、手掛かりがあっちゃこっちゃからバラバラと無関係に集まって来ます。先ほど言った章の引きと合わせて、手掛かりの提示のタイミングが絶妙。こうした関連のなさそうな事実が、終盤、一本の線にまとまっていく様が非常にきれいです。本格ミステリではありませんが、それを思わせる構成の妙……っていうとちょっと言い過ぎかな。

登場人物の心情が直接的に描かれることはほとんどありませんが、作者の描写が上手いためそれが切々と伝わってきます。例外的に主人公のエーレンデュル捜査官の心の中は丸見えなわけですが、彼は悲痛な思いを胸に秘めつつも、あくまで「捜査」に徹しようとしています。こうした態度には好感が持てますね。ラストの展開は、ベタっちゃベタですが、こういう主人公だからこそ、読ませる展開になっているのでは、という気もします。まぁ、この(あまり)明るいとは言えない引きには、賛否両論ある気もしますが……。

というわけで、警察小説としても物語としても、大変楽しめる作品でした。割合広く勧めやすい作品ではないかと思います。第4作は本書に続いてガラスの鍵賞を受賞しただけでなく、CWAゴールドダガー賞も受賞したとか。いやはや、これは早く続きが読んでみたい……。

書 名:湿地(2000)
著 者:アーナルデュル・インドリダソン
出版社:東京創元社
出版年:2012.6.9 初版

評価★★★★☆
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