隠し部屋を査察して
『隠し部屋を査察して』エリック・マコーマック(海外文学セレクション)

7月7日、日曜日、午前6時。北緯52度、西経108度に位置するカナダのある町から、それは始まった。地上に巨大な亀裂が出現し、幅100メートル、深さ30メートルの溝を残しながら、時速1600キロの猛スピードで疾走しはじめたのだ。西に向かって、触れるものすべてを消滅させながら……。不可解な現象が世界じゅうに巻き起こす大騒動の顛末を淡々と語る「刈り跡」、全体主義国家のもと“想像力の罪”を犯し〈隠し部屋〉に収容された人々を描く表題作など、20の物語を収録。小説の離れ業を演じ続けるカナダ文学の異才の、ユーモアとグロテスク、謎と奇想に満ちた〈語り〉と〈騙り〉の短編集。(本書あらすじより)

目次
「序文」
「隠し部屋を査察して」
「断片」
「パタゴニアの悲しい物語」
「窓辺のエックハート」
「一本脚の男たち」
「海を渡ったノックス」
「エドワードとジョージナ」
「ジョー船長」
「刈り跡」
「祭り」
「老人に安住の地はない」
「庭園列車 第一部:イレネウス・フラッド」
「庭園列車 第二部:機械」
「趣味」
「トロツキーの一枚の写真」
「ルサウォートの瞑想」
「ともあれこの世の片隅で」
「町の長い一日」
「双子」
「フーガ」
「謝辞」

……やー、これはすごいです。適当な褒め言葉がちょっと見つかりません。

この手のはほとんど読まないのでよく分かりませんが、いわゆる奇想系の短編集、といえばいいのかな。描かれる世界はまさにエロくてグロくてナンセンス。正直言ってちょっと苦手な感じです。グロとか普通なら絶対ダメ。
にもかかわらず、ものっすごい引き込まれてしまうんです。明らかに現実的ではない、ファンタジックでSF的な世界で繰り広げられる不条理の数々。それらの詳細・顛末を見たいがために、着々とページをめくってしまいます。
その理由は、おそらく作者が主観・感情を物語に全く差し挟んでいないから、ではないでしょうか。何が起ころうとも、その描かれ方は極めて客観的で冷淡。淡々とした筆致がブラックユーモアを誘い、読者にいわく言い難い魅力を感じさせている、というか。これは、訳者の増田まもるさんによるところも大きいでしょうね。

興味深いのは、そうした不条理をただ描いているのみで、ラストにあっと驚く展開を入れることが全くない、ということですね。人によっては、話が予定調和過ぎてつまらない、という感想を抱くかも。たぶんマコーマックさんは、サプライズには興味がないんですよ。自分の思い付いた変態的世界をただ文字に表したいというだけ。うぅん、なんかカッコイイな。

ベストは「一本脚の男たち」「ジョー船長」「刈り跡」でしょうか。第2夜の気持ち悪さが印象的な「祭り」も捨て難いですね(好きかはともかく)。後半の方が、文学的で難解な作品が多い気がします。ピンと来ないのもいくつかありました。なお一番ミステリ(クライム?)っぽいのは、ラストの「フーガ」でしょうね。

とにかく、一度読んでみてはいかがでしょうか。気に入るか気に入らないかはともかく、なかなか面白い読書体験になると思います。というか、世の中にはこんな本がいっぱいあるんだろうなぁ。まだまだ勉強不足です。

書 名:隠し部屋を査察して(1987)
著 者:エリック・マコーマック
出版社:東京創元社
    海外文学セレクション
出版年:2000.7.25 初版

評価★★★★☆
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