マシューズ家の毒
『マシューズ家の毒』ジョージェット・ヘイヤー(創元推理文庫)

嫌われ者のグレゴリー・マシューズが突然死を遂げた。高血圧なのに油っこいカモ料理を食べたせいだと姉は主張するが、別の姉は検死をやるべきだと主張。すったもんだの末に実施したところ、なんと死因はニコチン中毒で、他殺だったことが判明した。だが故人の部屋はすでに掃除されており、ろくに証拠は残っていなかった。おかげでスコットランド・ヤードのハナサイド警視は、動機は山ほどあるのに、決め手がまったくない事件に挑む羽目に……。巨匠セイヤーズが認めた実力派が練りに練った傑作本格ミステリ。(本書あらすじより)

いやはや、何とまぁ。驚きました。面白いので(笑)
前作『紳士と月夜の晒し台』は、登場人物の会話は面白いけど、ミステリとしてはうぅぅむ、で、星3つ、でした。ちょっと感想を引用してみます。


これが単なる小説ではなく、本格ミステリであるならば、かな~り不満足な作品ということになってしまうでしょうね。プロットは行き会ったりばったりのようで、伏線はほとんどなし、手がかりもほぼ皆無です。決め手の証拠はかなり良い出来だと思いますが、最後の最後に明かされても困ります(いや、一応解決シーンの前……というか直前ですけど)。著者のヘイヤーさんは、ミステリとしてはこれが処女作だそうなので、まだ書き慣れていないのかもしれませんが。


……つまり、書き慣れたのでしょうか(爆)いやとにかく、非常に良く出来た作品でした。あらゆる点が前作を上回っています。

やはり最大の魅力は、前作でもあった登場人物同士の会話、です。前作では親族が中途半端に集まっていましたが、今作では嫌われ者の家長であるじいさんが死んだことで、大勢いる遺族がやたらといがみ合います。これが面っ白いんですよ。コージーっぽいクリスチアナ・ブランドとでも言うのか(ブランド1つしか読んだことないくせに)。一人一人がはっきりと書き分けられていることもあり、彼らが右往左往して文句を言い合っている様がとにかく読ませます。
この揉め合いと同時進行で描かれるのが、某男と某女の微妙な関係の変化、です。いや、このほのめかしは絶妙ですね。こちらも読んでいてニヤニヤしてしまい、とても楽しかったです。

前作でズタボロだったミステリ面は、まぁ普通かな、というくらいですが、それでも十分水準は満たしています。家族内のごたごたにさりげなく伏線が入っている点などは、なかなか上手いんじゃないでしょうか。肝となるトリックをあえてばらした上で解決シーンに入る、という構成も良いですね(まぁただ、もう1つのある仕掛けは、さすがに分かると思いますが……)。あとは決め手の証拠さえちゃんとあればねぇ。
ちなみに死因はニコチンなわけで、登場人物たちは警察も含めて一様に「珍しいねぇ。そんなの毒になるんだー」みたいなことを言うわけですが、しかし、海を越えてニコチンは有名になってますね、早くも。

というわけでオススメです。探偵役のハナサイド警視のキャラがとてつもなく薄く、シリーズ性もそれほどでもないため、ここから読み始めるのでも十分かと。ただ、こっちを先に読むと、前作の登場人物がちょこっと出てしまうため、第1作の犯人を絞り込めてしまう、かもしれない、という問題は一応あります。だから、第1作を読まなくていいんじゃないかな(ひどい)。

書 名:マシューズ家の毒(1936)
著 者:ジョージェット・ヘイヤー
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mヘ-15-2
出版年:2012.3.23 初版

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/810-e566f5bd