冬の灯台が語るとき
『冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン(ハヤカワポケミス)

エーランド島に移住し、双子の灯台を望む屋敷に住みはじめたヨアキムとその家族。しかし間もなく、一家に不幸が訪れる。悲嘆に沈む彼に、屋敷に起きる異変が追い打ちをかける。無人の部屋で聞こえるささやき。子供が呼びかける影。何者かの気配がする納屋……そして死者が現世に戻ってくると言われるクリスマス、猛吹雪で孤立した屋敷を歓迎されざる客たちが訪れる――。スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞、「ガラスの鍵」賞の三冠に輝く傑作ミステリ。(本書あらすじより)

いやはや、これは素晴らしい。最近のポケミスはアメリカ系のぎゃぼい奴(意味不明)ばっかりだと勝手に思ってましたが、うぅむ、これは急いで前作も読まなければ。表紙変わったとか言ってすねてる場合じゃない。

全体の雰囲気は、ミステリというより、怪奇・幻想小説的。これといっておどろおどろしいわけではもちろんありませんが、「幽霊」というものの存在が非常に身近に感じられる、そんな不思議な雰囲気が全編に漂っています。これは、舞台がエーランド島だというのも大きいでしょうね。寒い感じがたまりません。「本格」度合いは違いますが、アン・クリーヴスにどことなく似た印象です。寒いですからね、こっちも。

物語としてはとにかく地味。淡々と語られ、動きの乏しい展開ですが、それでも読者を引き込むような魅力があります。ありきたりですが、人を書くのが上手い、のだと思います。作者は登場人物一人一人に相当愛着があるのではないでしょうか。老若男女、堅い人からちゃらい人まで、善人も悪人も含めて、向けられる視線はどことなく温かい……舞台は寒いけど。
特にそれを感じるのが、随所に挿入されるミルヤの手記に書かれた過去の灯台守のエピソード。基本的に悲劇的なんですが、もうなんか取り込まれるような魅力があります。こうしたエピソードによって、さりげなく自然の脅威を物語全体のモチーフとさせているのですが、上手いなぁ、まったく。読ませるじゃないですか。

本格ミステリとしての要素もあるにはありますが、まぁ、それを期待して読まない方が良いでしょうね(といいつつ、犯人の正体には結構驚きました)。悲劇的でありながら、どこか美しい世界観をぜひ味わってみて欲しいです。こりゃ急いで,謎解き要素の強いという『黄昏に眠る秋』も読まないと。

書 名:冬の灯台が語るとき
著 者:ヨハン・テオリン
出版社:早川書房
    ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1856
出版年:2012.2.15 初版

評価★★★★☆
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yossiworld.blog72.fc2.com/tb.php/805-04905783