死の扉
『死の扉』レオ・ブルース(創元推理文庫)

英国のとある小間物屋で深夜、二重殺人が発生。店主のエミリーと、巡回中のスラッパー巡査が犠牲となった。町にあるパブリック・スクールで歴史教師をするキャロラスは、生意気な教え子プリグリーに焚きつけられて、事件を調べることに。嫌われ者だったエミリーのせいで容疑者には事欠かないが……素人探偵の推理やいかに?イギリス屈指の名探偵、キャロラス・ディーン初登場作。(本書あらすじより)

ついに復刊されましたねー。訳された小林晋さんは、今後もシリーズ作品の翻訳を続けてくれるようです。おぉ、楽しみ楽しみ。

で、感想ですが……うぅん、とりあえず最初に言っておきますが、読んでいてとっても楽しめる作品であることは間違いないです。というか、普通に面白いです。ほのぼのとしたユーモアにはクスクス・爆笑しっぱなし(ゴリンジャー校長の耳ネタとか面白過ぎる)。伏線を張りまくったトリックの質・独創性もかなりのもので、真相が明かされた瞬間、おぉっ、となったものです。
さらにミステリオタクなご老人の語りが面白いこと。この人に、最後、あのセリフを吐かせたブルースには脱帽です。『骨と髪』でも感じましたが、レオ・ブルースは割と事件に納得のいく真相を探偵が提示した時点で満足してしまう節があり、証拠固めをきっちりとはしない人です。状況証拠に頼りまくりで、いまいち決定的要因がない。老人のセリフは、いわばそれを逆手に取ったような感じでしょうか。うぅむ、なるほど。ずるい(笑)
というわけで、英国古典ミステリ好きであれば、こりゃもう読むしかないでしょう。

なんですが……随所で言われるように手放しで「傑作」だと褒められるかというと、個人的にはちょっと違うかなぁという気がしています。それはなぜなのか。
証拠が少ないから,ではありません。ま、それもありますが、問題となるのは事件の現実性です。ネタバレを避けながら書くのは非常に難しいんですが、実現可能かどうかというよりは、これがリアルかどうか、という話。もし自分が犯人であれば、こういう犯行を行わなかった、はずですよね、やっぱり。
とかくと、えぇと何と言うか、そこを突くのはおかしいだろう、という文句が出るはずです。そもそも『死の扉』は、クリスピンの作品のように、「探偵小説」であることをパロディ化したような側面がもともとあるわけです。ということは、小説上の出来事であることを、ある意味大前提として書かれていることになります。ですから、現実性を問題にすること自体がそもそも間違っている、というのはよく分かります。いや、自分でもそうだと思いますし。
にもかかわらず不満だと思ってしまうのは、この難点は、割合簡単に作者が解決出来たはず、と感じるからなんですよね。1つだけ要素を組み込んでおけば、ここまで違和感は感じなかったと思うんです。

これより細かいことを書くと、ネタバレとは言いませんが、勘の良い人は分かってしまう可能性があるので、追記に記すことにします。

まぁ、でも、楽しめたからいいかな。ごちゃごちゃ書きましたが、やはり、古き良き探偵小説として優れた作品だと思います。

書 名:死の扉(1955)
著 者:レオ・ブルース
出版社:東京創元社
    創元推理文庫 Mフ-22-1
出版年:2012.1.27 初版

評価★★★★☆

















【※注意:以下、ネタバレはありませんが、やや踏み込んだ書き方をしています。未読の方が読まないでください】

本格ミステリを読む人が作者に求めることの1つに、犯人の行動の合理性、というのがあると思います。犯人のとった行動には全て納得の出来る意味がなければいけないし、その考えが読者の常識から大きく外れるようなことはあまり喜ばれないでしょう。
そこで問題となるのが、今回のトリックなわけです。このトリック、非常に良く出来ていますし、意外性もばっちりですが、その意外な理由の1つが「まさかそんなひどいことを!」てのがあるのではないでしょうか。まさか、そんな目的のためにそんな大それたことをしてしまうなんて!という驚き。これは果たして、合理的な行動と言えるのでしょうか?
仮に共犯者にその動機があれば問題なかったのですが、別にそういうわけではないですし。この物語の魅力の1つである、ユーモラスでほのぼのとした文体が、逆にこの真相をあまりに予想外なものにしてしまっている感が否めません。個人的には、やはり両方の動機はしっかりと作って欲しかったな、というのがあり、その点だけがちょっとだけ残念っちゃ残念です。
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